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#66: アメリカ総選挙の大問題(第1回)

10/25/2020

 
【大統領選】
9日後に総選挙を控えるアメリカは、世界における民主主義のお手本であるかのように、語られたりします。確かに、米国市民の政治への高い関心や、選挙に携わる熱心な活動など、とても素晴らしいところはあります。その一方で、230年以上も前に定められた憲法の条文により、その実態が、民主主義のあるべき姿から乖離してしまっているのも、事実です。
 
これらを踏まえ、アメリカ総選挙の主役である大統領選と米国議会(衆議院・上院)の仕組みを解説しながら、その問題点を通じて、米国の民主主義について考えてみます。
 
民主主義における大原則は、最も多くの票を得た候補者が当選すること。もちろん、票の数が正義を証明した訳でもなく、正しい訳でもない。誤っていることもままある。その時点において、単純に数で上回っていることに過ぎない。
 
けれども、民主主義が現在のところ一番良さそうなシステムである以上、最多得票の候補者が当選することに、一定の理解はできます。それにより、多数派が少数派を思いやり、責任をもって全ての人たちにとって、より良い社会をリードしてゆくことが望ましい姿です。
 
ところが、残念なことに米国の大統領選挙は、必ずしもこの民主主義の大原則に則っていません。それは、最も多くの票を得た候補者が、落選することがあるからです。
 
実際に、前回2016年の大統領選において、ヒラリー・クリントン6,585万票、ドナルド・トランプ6,298万票と、287万票も多く得票したヒラリーが落選し、トランプが当選しました。近年においては、2000年の大統領選にて、54万票も少なく得票したジョージ・ブッシュ(ジュニア)が当選しています。アメリカの歴史上、その他3回の大統領選において、同様のことが起こっています。
 
なぜ、このようなことが起こるのでしょう。
 
それは、1788年に制定された憲法第2条により、国全体における「米国市民による投票数」ではなく、各50州(および首都ワシントンDC)それぞれの住民による投票結果に基づいて、今度はその州の「選挙人」(Electors)が候補者に投票し、その「選挙人による投票数」の合計によって、大統領選の勝敗が決まってしまうからです。
 
何だか、不必要に入り組んでいるので、もう少し説明します。
 
例えば、自動車産業で知られるミシガン州は人口999万人、全米3億2820万人の約3%です。憲法で定められた「選挙人」の総数538人のうち、ミシガン州に割り当てられた「選挙人」は12名、約2%です。このように、「選挙人」はおおむね人口に比例して、各州に割り当てられています。
 
けれども、問題はここからです。
 
2016年のミシガン州における得票は、ヒラリー227万票、トランプ228万票。わずか0.2%の僅差で勝ったトランプですが、ミシガン州の「選挙人による投票」12票を総取りする仕組みになっているのです。この結果、大統領選の勝敗を決める「選挙人による投票数」は、ミシガン州ではトランプが12票、ヒラリーが0票になりました。
 
メイン州とネブラスカ州を除く各48州(および首都ワシントンDC)において、このような総取りをする仕組みになっていることから、国全体における「米国市民による投票数」では負けても、大統領選の勝敗を決める「選挙人による投票数」においては、勝ってしまうことがあるのです。
 
それは、2016年の場合、全米において287万人もの人たちの投票が、ないがしろにされてしまう仕組み。これでは、「一人一票」の民主主義とは言い難く、多くの国民の納得も得られないでしょう。このことから「トランプを正当な大統領とは認めない」という気持ちが、多くの国民に根付いてしまったのです。
 
アメリカ総選挙を控えて、一人ひとりの1票が、その人の「声」であることを誠実に受けとめ、誰の投票もないがしろにされないことを願います。


続きを読む:アメリカ総選挙の大問題(2)【米国議会】

​全シリーズ:アメリカ総選挙の大問題 (1)~(3)
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