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#67: アメリカ総選挙の大問題(第2回)

11/25/2020

 
【米国議会】
今月3日に投開票が実施されたアメリカ総選挙において、バイデンが700万票超の差をつけて大統領選を制しました。今回は、最も多くの票を得た候補者が当選するという、民主主義の大原則に則った結果となり、誰の投票もないがしろにされなかったことに、とても安心しました。
 
けれども、大統領選の勝敗を決める「選挙人による投票数」は、ほとんどの州で総取りをする仕組みになっているため、一歩間違えれば、またもや、最多得票の候補者が落選することになりかねない、危うい状況でした。
 
この歪んだ仕組みを変えるには、憲法の改正が必要です。それには、米国議会における衆議院 (House of Representatives) で3分の2、上院 (Senate) で3分の2、そして、50州のうち4分の3に相当する各38州で、承認可決しなければなりません。
 
現実的に、これは、可能なのでしょうか。

その確度を探るために、まず重要なのは、衆議院と上院における議員数の割り当て方式を理解することです。衆議院は人口比例により、各州に議員数が割り当てられていますが、上院は人口に関係なく、各州2名づつ。この、人口に比例しない上院議員数の割り当てが、「一人一票」の民主主義を阻んでいるのですが、ここを、より具体的に説明します。
 
例えば、米国最大の人口を誇るカリフォルニア州は人口3952万人、最小のワイオミング州は58万人。カリフォルニアには、ワイオミングの約68倍の人びとが住んでいるので、衆議院は、この人口の違いをおおむね反映して、カリフォルニア53名・ワイオミング1名の議員数を割り当てています。各州に割り当てられた議員数を、人口に比例することにより、「一人一票」の民主主義を実現するのです。
 
ところが、上院議員は、それぞれの州で2名づつですので、各州に割り当てられた議員数は、人口に比例しません。これは、230年以上も前に定められた憲法第1条により、決められてしまっている。
 
そうすると、カリフォルニアの上院議員1名は1976万の人たちを代表する声なのに、29万の人たちを代表する声であるワイオミングの上院議員1名と、同じ重さになってしまいます。実に、68倍の「一票の格差」。それは、カリフォルニアの68票と、ワイオミングの1票が、上院では同じ重さであるという歪み。一人ひとりの1票が、その人の「声」であることを誠実に受けとめ、誰の投票もないがしろにされないとは、とても言えない憲法の条文です。
 
このような状況のなか、憲法の改正に必要である上院における3分の2の承認可決は、「一人一票」の民主主義から大きく乖離していると言わざるを得ない。
 
それは、大統領選の勝敗を決める「選挙人による投票数」や、そもそも人口に比例しない上院議員の割り当てなど、これら歪んだ仕組み自体を変えることが、民主主義の大原則である最多得票によって、決められなくなっているということ。
 
現に、複数の大手調査機関による20年間にわたる調査において、約60%の米国市民が、大統領選挙は「選挙人による投票数」ではなく、「米国市民による投票数」によって勝敗を決めることに、賛成していることが分かっています。それでも、人口に比例しない上院議員の割り当てによって、それが実現できない。
 
実際に、1969年には、大統領選挙を「米国市民による投票数」によって決める憲法改正案が、衆議院において339対70の圧倒的多数により可決されました。けれども、比較的人口の少ない地方の州の上院議員数名の賛同が得られず、上院を通過することはなかったのです。
 
また、各州ごとで、人口に大きな違いがあるなか、4分の3に相当する各38州における承認可決が憲法改正の必須要件であることも、やはり人口に比例しないことから、「一人一票」の民主主義から大きく乖離していると言わざるを得ない。

これらのことから、米国市民の大多数が政治的な歪みの解消を望もうとも、憲法改正を実現する確度は、残念ながらとても低いのです。
 
地方の州に住む人たちが、「一人一票」より遥かに大きな影響力をもって、米国全体の政治的判断を左右する傾向を、憲法の条文が決めてしまっている。これこそが、アメリカが、民主主義のあるべき姿から乖離してしまっている主因なのです。


続きを読む:アメリカ総選挙の大問題(3)【銃規制】
前回を読む:アメリカ総選挙の大問題(1)【大統領選】
 
全シリーズ:アメリカ総選挙の大問題 (1)~(3)
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