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#68: アメリカ総選挙の大問題(第3回)

12/25/2020

 
【銃規制】
地方の州に住む人たちが、「一人一票」より遥かに大きな影響力をもって、米国全体の政治的判断を左右する傾向を、憲法の条文が決めてしまっている。このことから、米国市民の大多数が政治的な歪みの解消を望もうとも、憲法改正を実現する確度は、残念ながらとても低い。
 
なにも、憲法改正だけではありません。米国議会が決定できる銃規制、最高裁判事の指名、また、トランプも訴追された大統領の弾劾など、上院における承認を要する判断はすべて、「一人一票」の民主主義から大きく乖離しているのです。
 
例えば、アメリカにおける大問題である銃犯罪。憲法により、銃の所持が広く認められているアメリカでは、銃による殺人事件は日常茶飯事。マシンガンによる銃乱射殺人事件も後を絶たず、子どもを学校に通わせるにも銃による殺人リスクを覚悟しなければならないほど、とても愚かしい社会になっています。
 
その実態は、数字でも明らかです。
 
米国における銃による殺人は、今年だけで約1万9千人。これは、毎日50人以上の命が、銃により奪われているということ。ここには、自殺は含まれていません。更に、命を落とさないまでも、障害が残ってしまった人たちや、トラウマの後遺症に悩まされ続けている人たちなど、銃による身体的・心的な負傷者も含まれていません。もちろん、銃による脅迫被害や、家族・友人を銃で失った悲しみや絶望も、被害への恐怖に怯える日々の心的ストレスも、この数字には一切表れません。
 
また、一度に4人以上が銃により殺害される銃乱射殺人事件は、今年だけで604件。毎日2件近くもあるのです。
 
日本やイギリスのように、厳しい銃規制のもと、銃による殺人がまれな社会と比較すると、米国社会の銃犯罪が病的な水準にあることが分かります。
 
これ程までの被害のなか、なぜ、アメリカでは銃規制が進まないのか。
 
先ず確かなことは、それが「米国市民の総意」ではないということ。実際に、大手調査機関4社の調べによると、65%~75%の米国市民が銃規制に賛成しています。けれども、実行力のある銃規制が前に進まないのは、なぜなのか。
 
それは、上院が銃規制を認めないからです。ここでも、比較的人口の少ない地方の人たちが、米国全体の政治的判断を左右する傾向を、憲法の条文が決めてしまっているからです。
 
アメリカの広大な土地では、憲法を定めた230年以上も前はもちろんのこと、現在ですら、人口の少ない地方において、何らかの緊急事態が発生し、通報しても、警察が現場に到着するまでに数時間はかかる地域があります。そのような状況を捉えたならば、護身用の銃が必須だと考える地方の人たちがいることにも、一定の理解を示すことはできるでしょう。
 
けれども、だからといって、実行力のある銃規制をすべて反対したり、戦場で使用するマシンガンの規制をも拒むことは、許されません。一方では、人口の少ない地方における銃の在り方を考慮しつつ、他方では、大多数の銃犯罪が起きている都市部における銃規制を進めること。その双方のバランスを、真剣に模索する姿勢を示さない銃規制への一律な反対は、銃により被害にあっている人たちに誠意をもって寄り添ったならば、許されることではありません。
 
視野の広い教育に学ぶ、多種多様な人びとの中で生活する、お互いを認め合う先進的なアメリカが、世界をリードするテクノロジー等を創造している現実があります。その一方で、教育に恵まれない、偏った人びとに囲まれて生活する、似たような価値観しか認めない閉鎖的なアメリカが、世界から孤立し、米国全体の発展を阻んでいる現実もあります。両方ともに、今日におけるアメリカの現実なのです。
 
その閉鎖的なアメリカを助長する、憲法の条文。
 
それは、上院議員数における、実に68倍の「一票の格差」として表れています。そして、カリフォルニアに住む68人が銃規制に賛成しても、ワイオミングに住む1人が反対すれば、銃規制は前に進まない形として、表れているのです。
 
銃規制が進まないことにしても、トランプが287万票も少なく得票しても大統領に当選したことにしても、それらは「米国市民の総意」ではありません。むしろ、大多数の米国市民が、それら歪みの解消を切実に望んでいます。それを、比較的人口の少ない地方の人たちが、「一人一票」より遥かに大きな影響力をもって、阻むことができてしまう憲法の条文。
 
これこそが、アメリカ民主主義の大問題なのです。


前回を読む:アメリカ総選挙の大問題(2)【米国議会】

全シリーズ:アメリカ総選挙の大問題 (1)~(3)
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同じテーマを読む:暴力/平和

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