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#62: コロナ危機から学ぶ(第3回)

6/25/2020

 
【地球温暖化】
【コロナ危機から学ぶ】シリーズを書き始めて、2か月が経ちました。その間、とても残念なことに、世界中で確認された感染者や犠牲者は、約3倍にも膨れ上がってしまいました。一人ひとりの健康や命が失われるこの悲しみは、はかり知れません。
 
コロナ危機について考察を重ねるたびに、暗たんとしてきます。命、健康、生活。どれをとってみても、とてもネガティブなことばかり。けれども、暗いトンネルの中にいても、一筋の光が見える時もあります。微かな希望の兆しを、感じる瞬間もあります。
 
今現在がそうであるのならば、その光は、地球と自然の治癒能力への希望かも知れません。
 
地球温暖化は、1850年~1900年の産業革命以降、人間が地球を汚してきた結果です。それは、私たちが化石燃料を燃やすことから、大気中の二酸化炭素など温室効果ガスの濃度が上昇し、地表の熱を逃がしにくくすることで、地球全体を温めること。気温が上昇すると、海・土壌・岩石・森林、そして地球上のすべての生き物に、熱波や豪雨などの激しい異常気象、それらを通じた食糧難など、甚大な影響をもたらす。
 
もちろん、地球が数万年の時をかけて気候変動を自然に繰り返していることをあげ、科学的見地や事実はさておいて、地球温暖化を否定しようとする人たちは、どの国においてもいるでしょう。けれども、科学者たちが警鐘を鳴らしている地球温暖化問題は、人為的な地球表面温度の上昇のこと。それは、万年もの歴史をさかのぼってみても類を見ないほど、不自然かつ極端な上昇なのです。
 
また、150年程の観測史上で、世界的に最も気温の高かった年トップ5が、全て直近の5年以内であること。さらに、昨年で締めくくった2010年代が、最も高温な10年間だったこと。そして、世界の温室効果ガス排出量が、直近50年で倍増していることからも、人為的な地球温暖化は科学的事実です。
 
国連によると、温暖化による被害から地球を守るには、地球の人為的な気温の上昇を、産業革命以前のレベルと比較して、1.5℃以内にとどめる必要がある。ちなみに2017年時点で、同レベル比で、地球の気温は既に1℃上昇しています。
 
そうなると、残る0.5℃以内の上昇にとどめるには、今から2030年までの10年間で温室効果ガス排出量を、少なくとも、毎年8%づつ削減しなければならない。これは、今まで私たちが歴史上、一度も達成したことのない大幅な削減を、毎年する必要があるということ。また、これは、2030年の排出量を、現在の約40%の水準まで下げる必要があるということ。そして、これが、地球温暖化を研究する世界中の科学者たちの、ほぼ一致した見解なのです。
 
そのような中で、今年の1月から3月の第一四半期において、世界の温室効果ガス排出量は著しく減り、2020年は史上初めて、前年比8%の排出削減が達成できる見込みになっています。コロナ危機が2月頃から世界的に本格化したことから、3月の時点で、世界の化石燃料使用量は前年比約5%減、道路交通量は50%減、航空交通量は60%減。4月中旬の時点で、世界のエネルギー消費量は約17~25%減。それらが、温室効果ガス排出量を大幅に削減しているのです。
 
コロナ危機という、あまりにも間違った理由による、温室効果ガス排出量の削減。けれども、ニューデリーの透き通るような青空を、初めて見上げる子どもたちがいます。北京の清々しい空気を、数十年ぶりに味わう人たちがいます。私たちが汚し続けているこの地球の、驚くべき治癒能力を目の当たりにすると、暗いトンネルの中に差し込んだ、一筋の光のような希望です。
 
これを一時的なものとせず、自然とともに生きる私たちでありたい。そのためには、コロナのような危機がなくとも、世界中の人たちが協力し合って、ゆずり合いたい。そして、産業革命以降、生活の豊かさと引き換えに環境汚染を散々してきた、先進国と呼ばれる国々の人たちがより譲歩し、計画的な温室効果ガス排出量の削減を達成したい。

続きを読む:コロナ危機から学ぶ(4)【命 or 生活?】
前回を読む:コロナ危機から学ぶ(2)【殺人者が英雄?】
 
全シリーズ:コロナ危機から学ぶ(1)~(4)
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同じテーマを読む:環境

#20: 持続できない原発(第4回)

12/8/2017

 
【私たちの責任】
​原発が持続できない3つ目の理由である、原発にかかる本当のコスト。その二つ目の主張として「原発がなければ電気代が高くなるから、日本は原発をやめられない」。これが、明らかな誤りだということを「逆転の根拠 その1~3」を示して、説明しました。
 
「その1:安全対策費用」は3.3兆円、「その2:事故処理コスト」は879兆円、「その3:安全廃炉コスト」は336.1兆円、総計1218.4兆円。今の科学をベースに、推定でも試算できる範囲内だけで、この巨大な金額です。世界一の借金大国と呼ばれる、日本国の借金額をも超えるこの金額が、経済産業省の「エネルギー白書」において、おおむね記載漏れとなっているのです。そして、今なお、原子力の発電コストが安いと主張し続けて、原発の再稼働や新設までをも進めようとする政権や原発推進派は、無責任を通り越して、もはや悪質ではないでしょうか。
 
それでは、総計1218.4兆円という巨大な金額は、私たちの生活レベルにまで落とし込んで考えてみると、実際にどのような電気代なのか。
 
2017年時点において、日本には約1億2千6百万人が暮らしています。そうすると、1人当たり967万円の電気代が、実際に今まで私たちが支払った電気代をさらに超過して、既にかけてしまった計算になります。3人家族の世帯であれば、2900万円ほどになります。
 
これを、毎月の電気代として考えてみます。日本人の平均寿命が約83歳ということは、生まれたあの日から亡くなるその日まで、毎月もれなく電気代を払うと仮定すると、996か月になります。その間、私たちは電気代を1人当たり毎月9700円、過少請求される計算になります。3人家族の世帯であれば、毎月2万9千円ほどになります。自分が使った分は、自分が払うことが当然だとするならば、毎月追加で支払う必要が、本当はあるということです。
 
日本に54基の原発を建設して、福島原発事故を1件起こしてしまったことで、この電気代は既にかけてしまったのです。総計1218.4兆円という金額は、そのような、巻き戻すことができない、現実の電気代です。
 
今日あなたは、この高い電気代を追加で払わないでしょう。明日も払わないでしょう。というより、あなたが生きているうちに、そのほとんどを払わないのではないでしょうか。けれども、このあまりにも高い電気代は、既にかけてしまったのです。誰かが払わなければなりません。それでは、いったい誰が、今ここに生きる私たちによって、既にかけてしまったコストを払うのでしょうか。
 
それは、これから生まれてくる人たちが払うのです。私たちの子や孫、またその子や孫たちです。自分が払わないコストや、解決できない問題を、他者に押し付けているのが、今ここに生きる私たちなのです。これも「他者の犠牲」のうえに成り立つ「自分ファースト」ではないでしょうか。
 
原発は持続できません。その理由は、本文で述べたように、明白です。
1つ目の理由:自然災害やテロなど、予測不可能なことが起こることを想定すると、危険すぎる。
2つ目の理由:高濃度放射性物質に汚染された水は、今の科学や技術では解決できない。
3つ目の理由:原発にかかる本当のコストは、火力発電コストの比ではないほど、莫大である。
 
そして、今ここに生きる私たちに原発の責任があることを、疑いの余地もなく、はっきりと意識したい。なぜなら、原発により発電された電力を「安いから」と言って、今まで使ってきて、そしてこれからも使い続けることを、多くの人は許容しているからです。「自分だけではどうにもならないから」と言って、現状を許してしまっているということは、消極的であっても、許容していることに違いはありません。
 
このような時だからこそ、今どうするかが、一人ひとりの個人に問われています。あなたは、「原発ゼロ」を公約にしている候補者に、選挙で投票しましたか。周囲の人たちに、原発は続けるべきではないと、伝えましたか。権力者に批判的になると仕返しが怖いし、周囲の目も気になるので、おとなしく何もしないのか。それとも、良くないことは良くないと、それが権力者に対してであっても、周囲の目が気になろうと、当たり前のことを当たり前のように言える、勇気と信念を持つのか。こうした、一人ひとりのチョイスが世論を作り上げ、積み重ねていけば、世界を形成してゆくのです。
 
福島原発事故以前は「知らなかった」で済まされた気になっていた責任も、知ってしまった今においては、その責任を逃れることは許されません。
 
そして、ここで述べた以外にも、原発にかかる本当のコストは、まだまだ際限がないほどあります。例えば、福島県産コメのセシウム検査に2012年から2016年の5年間で305億円。幾多の農家や生産者による、食品の放射能検査の費用。そして何よりも、コストとして数値化が難しい健康被害や環境汚染。世界中の人たちが、海や山の幸を食する度に頭によぎる、放射能汚染の心配。幸せな地元生活を奪われた住民の苦悩。家族と離れ離れに暮らすしかない人たちの心細さ。家族を失った人たちの深い悲しみ。それらにより自殺に追い込まれた人たちの無念。
 
人の生活の価値、心の安らぎの価値、幸せの価値、生きる物すべての価値、そして命の価値。それらの価値は、一体どれくらいなのでしょうか。あなたにとって、これらの価値はどれくらいなのでしょうか。
 
これらの価値と原発の真実に、正面から真剣に向き合えば、原発が持続できないことは明らかではないでしょうか。今ここに生きる私たちの責任を、今ここから生きる私たちの行動によって、全うしたい。
 
 

日本の原発コスト一覧
  • 安全対策
              3.3兆
 
  • 事故処理=賠償+除染+事故廃炉(シェルター建設 + シェルター運営)+ メルトダウン核燃料廃棄
              879兆 = 8兆 + 7兆 + (624兆 + 240兆) + ?
 
  • 安全廃炉=解体+核廃棄物保管(オンカロ建設 + オンカロ運営)
              336.1兆 = 6.1兆 + 330兆 
 
  総計: 1218.4兆円

前回を読む:持続できない原発(3)【オンカロ】
 
全シリーズ:持続できない原発(1)~(4)
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#19: 持続できない原発(第3回)

11/18/2017

 
【オンカロ】
最後に、幸いなことに事故が起こらなかったとしても、耐用年数40年を迎えると、必ずかかる安全廃炉コストについて考えます。現在の日本では原発11基が、廃炉を決定しています。そして、安全廃炉を完了するには、原発の解体と核廃棄物の保管が必要となります。
 
先ずは、ステップ1である原発の解体。2016年時点で、世界中に建設された原発の4分の1にあたる150基が廃炉を決定していますが、実際に解体が終了したのは、わずか17基。その17基は、おおよそ1基あたり10億ドル(約1130億円)の解体コストがかかったと発表されています。最近の参考事例として、2014年12月に安全廃炉を決定した、米国バーモント州にあるバーモント・ヤンキー原発。こちらの解体コスト予算は、概算で12億ドル(約1350億円)。ちなみに、日本はひとつも解体を終了していない。
 
日本にある原発54基(稼働可能な43基と廃炉決定した11基)は、稼働から平均32年が経っていることを考えると、廃炉を決定する原発が次々とでてくることは、もはや確実です。そして、その解体コストは540億ドル(約6.1兆円)かかる計算になります。
 
次に、ステップ2である核廃棄物の保管。世界中に建設された約600基の原発どれ一つをとってみても、生き物にとって安全なレベルに達するまで、核廃棄物を保管する現実的な方法は準備されていません。唯一それに近い試みが、フィンランドに建設中の「オンカロ」でしょう。
 
フィンランドは、早くから安全廃炉について、真剣に国内で議論を重ねてきた国です。核廃棄物を保管するオンカロと呼ばれる地下貯蔵所。その建設地の選定作業は、1983年に開始。同国南西部に位置するエウラヨキのオルキルオト島を、その地として決定したのが2001年のこと。そして2004年から、深さ520メートルのトンネル掘削工事に着工。2016年には、トンネル奥の地下に、貯蔵所の建設を開始。完成は2020年頃を目指しており、そこから100年間、同国内の全ての核廃棄物は、ここに保管されることになる。そして、100年後の2120年頃にオンカロは封鎖され、約10万年に渡って隔離する予定。
 
建設費は8億ユーロ(約1060億円)を予定しているが、予算オーバーなどを考慮して、既に14億ユーロ(約1860億円)の積立金を確保している。ただし、封鎖されるといっても、施設の老朽化への対策が求められる時が、いずれどこかで来るでしょう。さらに、プルトニウムが生き物にとって安全なレベルに達するまでには24万年もかかることを考えると、オンカロの想定より2.5倍の耐久性が必要です。これらを考慮して、実際のオンカロ建設費が積立金の2.5倍になると仮定すると、現在の通貨価値で計算して、35億ユーロ(約4650億円)になります。
 
また、封鎖されるといっても、高濃度放射性物質を保管する貯蔵所です。24万年という気の遠くなるほどの年月、安全管理のための科学者や厳重な警備は必要でしょう。「逆転の根拠 その2」にて事故廃炉コストを試算した際に、シェルター運営費を推定で試算しましたが、それと同じ方法でオンカロ運営費も試算してみます。ただし「安全廃炉」の方が、メルトダウンした核廃棄物を扱う「事故廃炉」に比べて、はるかに管理し易いと考えられます。従って、シェルター運営費の10分の1のコストで、オンカロの運営ができると仮定すると、年間運営費は1億円。現在の通貨価値で計算して、24万年間のオンカロ運営費は24兆円になります。
 
そうすると、フィンランドの核廃棄物保管コストは、オンカロ建設費4650億円、運営費24兆円、合計約24.5兆円になります。ここで忘れてはならないのは、これはフィンランドにある原発4基からでる100年分の核廃棄物を保管するコストだという事実。仮に、同国が原発政策を100年以上続けたり、原発を増設すると、第2や第3のオンカロが必要となり、コストは倍々式に増えます。
 
フィンランドの原発4基に比べ、日本には54基あります。そうすると、日本の核廃棄物保管コストは、フィンランドの13.5倍に値し、合計330兆円になります。そしてフィンランド同様、100年以上も原発政策を続けたり、原発をさらに増設すると、コストは倍々式に増えます。
 
ここで、ステップ1と2で、推定でも何とか試算してみた安全廃炉コストを合計してみましょう。解体コストの6.1兆円、核廃棄物保管コストの330兆円、合計336.1兆円。これを含めると、もう比較することに呆れるほど、火力と原子力の発電コストは遥かに大逆転します。これを「逆転の根拠 その3」と呼ぶことにしましょう。
 
しかし、今の科学において、最も先進的なオンカロをもってしても、本当に想定通り機能するのかについては、多くの疑問や不安が残ります。
 
例えば、数々の仮説がありますが、過去数百万年の氷河期の中に、4万年から10万年間続く「氷期」と呼ばれるミニ氷河期のような時代が、地球の歴史では繰り返されています。その移り変わりの時期に、巨大地震が頻発したり、地盤の上下変動が数百メートルもあった形跡が残っています。オンカロですら、深さ520メートルでしかありませんので、これらの地震や地盤変動に、高濃度放射性物質を漏らさずに耐えられるのか。
 
また、今の時代に作られた構造物が、氷期の気温下において4万年から10万年というレベルの年月を、高濃度放射性物質を漏らさずに耐えられるのか。人類が未だかつて体験したことのない試みに、疑問や不安が残るのは当然でしょう。
 
さらに、日本は100年に一度、大地震の起こる国。24万年の間に、約2千4百回も起こる割合です。そして、地震の震源は数キロから数十キロレベルですので、オンカロより遥か深い地層まで、激しく揺さぶられるのです。構造上、高濃度放射性物質を漏らさずに耐えられるのか、多いに疑問です。
 
これらの意味においても、核廃棄物を保管する今の技術は、とても完成形とは言えないのではないでしょうか。


続きを読む:持続できない原発(4)【私たちの責任】
前回を読む:持続できない原発(2)【本当のコスト】
 
全シリーズ:持続できない原発(1)~(4)
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#18: 持続できない原発(第2回)

10/28/2017

 
【本当のコスト】
原発が持続できない3つ目の理由は、原発にかかる本当のコストです。原発推進派のみならず、一般市民もが「原発がなければ、他のエネルギー源を増やさないと、電力供給が不足する」と言います。そして「原発がなければ、電気代が高くなる」と言います。果たして、それら二つの主張は、本当に正しいのでしょうか。
 
先ずは、一つ目の主張として、代替エネルギーがないと電力供給が不足するから、日本は原発をやめられない。これは、本当に正しいのでしょうか。
 
結論から言うと、これが正しくないことは、すでに実証されています。2012年5月に泊原発を定期検査のため停止してから、2015年8月に川内原発を再稼働するまでの間、3年以上も日本は稼働原発ゼロでした。その間、節電をしたり、街中のネオン等を少し控えめにしたりはありましたが、夏場や冬場のピーク電力を含めて問題なく足りました。しかも、火力など代替エネルギーを増やすことなく、電力供給は足りたのです。
 
その実績を踏まえても、なお、もっと電力がないと不安だという場合。また、経済がさらに発展したら、今よりもっと電力が必要になるという場合。その対応策として、火力発電所や太陽光発電システムの増設などにより、安全かつ低コストで電力を増やせます。
 
次に、二つ目の主張として、原発がなければ電気代が高くなるから、日本は原発をやめられない。「これこそは正しい」と多くの一般市民が信じているようです。そこで、3つの根拠を示して、この主張について考えてみたいと思います。
 
そもそも一般市民がこの主張を信じるに至ったのは、メディアや報道など
を経由して、もとをたどれば経済産業省の「エネルギー白書」にあるのではないでしょうか。「エネルギー白書」によれば、火力の発電コストは、原子力に比べておおよそ1.4倍だと説明しています。
 
そうすると、仮に原発をゼロにして、その分の電力を火力で発電した場合。電気代がひと月1万円の一
般家庭で4千円増、ひと月2万円の家庭で8千円増の計算になります。この段階までの情報で「それだと高すぎて、原発をやめられない」と考える人と、「家計には痛いが、原発の恐ろしいまでのリスクを考えると、保険料を払うようなもの」と考える人と、意見の割れるところでしょうか。
 
そこで、安全対策費用について考えます。福島原発事故により、原発はさらに強度な安全対策が必要であることが明らかになりました。また、日本の原発は稼働から平均32年、アメリカは平均38年経っており、原発の耐用年数が40年とされるなかで、老朽化していることは間違いのない事実です。それらを加味すると、ますます安全対策費用は膨大になる。
 
2016年7月時点で、日本で稼働可能な原発43基に必要とされる安全対策費用は合計で3.3兆円だと、これらの原発を運営する電力会社により見積もられています。しかし、このコストは発表の度に膨れ上がっており、この金額内で収まるとは到底考えられません。そして、この金額の多くは、先ほどの1.4倍の計算根拠となる「エネルギー白書」における原子力の発電コストには含まれていません。
 
実際にかかる安全対策費用を含めると、とたんに火力と原子力の発電コストは逆転するでしょう。これを「逆転の根拠 その1」と本文中では呼ぶことにしましょう。
 
次に、原発事故が起こってしまった場合の事故処理コストについて考えます。福島原発事故1件につき、2013年時点で、政府は試算で、賠償に5.4兆円、除染に2.5兆円、合計7.9兆円と発表しました。しかし、これが2016年時点で、賠償に8兆円、除染に7兆円、合計15兆円と、ほぼ倍増します。
 
しかも、ここには事故廃炉コストが一切含まれていない。住民の健康チェックや健康被害への手当とする医療費も、その多くは含まれていない。凍土遮水壁の350億円すら含まれていない。これらのことから、政府が発表している福島原発事故の処理コストは、到底信頼できるものではありません。これからも発表の度に、コストはどんどん膨れ上がるでしょう。
 
特にコスト面のみでとらえると、事故廃炉コストは想像を絶するほど莫大になるでしょう。例えば、福島と唯一同じであるINESレベル7の事故を起こしたチェルノブイリ。こちらは事故廃炉の方法として、放射能漏れをできるだけ封じ込めるよう、「石棺」と呼ばれるコンクリートの建造物で、爆発した原子炉建屋を丸ごと覆って固めました。
 
その石棺の耐用年数は30年とされており、現時点で既に過ぎています。メルトダウンした核燃料は、ほぼそのまま石棺の中に残っており、雨水が原子炉内部を通って、周辺の土壌を高濃度放射性物質で汚染し続けている。また、老朽化した石棺は、湿気などからコンクリートや鉄筋が腐食しており、放射能漏れは確実に続いている。万が一崩壊すれば、大量の高濃度放射性物質をまき散らす危険がある。
 
現在チェルノブイリで建設されているのが、耐用年数100年のシェルターで、老朽化した石棺を丸ごと覆うという新たな計画。こちらの建設費は当初の試算で8億ドル(約900億円)でしたが、建設が進むにつれ、コストはみるみる膨れ上がりました。本年中に完成を目指すこのシェルター、現在まで実際にかかった建設費は23憶ドル(約2600億円)で、当初試算の約3倍になっています。それを、プルトニウムが生き物にとって安全なレベルに達するまで、仮に24万年間、コツコツと続けた場合、約2千4百回もシェルターを建て替えることになります。そうした場合のシェルター建設費は、現在の通貨価値で計算して5.5兆ドル(約624兆円)。
 
そこには、24万年間のシェルター運営費は含まれていません。高濃度放射性物質を扱うシェルターですから、安全管理のための科学者や厳重な警備、その人件費や機材費などを加味するとします。それらに、仮に年間運営費が10億円かかると想定すると、現在の通貨価値で計算して、24万年間で240兆円になります。

もちろん、たとえ24万年という気の遠くなる程の年月をかけて、それをやり終えたとしても、メルトダウンした核燃料を廃棄するコストの試算どころか、方法すらも今の科学にはありません。
 

ここで、推定でも何とか試算してみた事故処理コストを合計してみましょう。信頼性の低い政府試算による賠償・除染の15兆円。事故廃炉コストを構成するシェルター建設費624兆円と、まったくの想定値であるシェルター運営費240兆円。これらを合計すると、事故処理コストは879兆円。そこに、現在においては試算不能なメルトダウン核燃料廃棄コストを含めると、まったく見当すらできない莫大な金額になるでしょう。
 
しかも、莫大な金額を前にして忘れがちになるのは、これは福島原発事故1件分のコストだという事実です。12年に一度、同じような事故が再来するリスクは、ここにはまったく加味されていません。この1件だけを電気代に上乗せして含めるだけでも、まったくお話にならない程、火力と原子力の発電コストは大逆転します。これを「逆転の根拠 その2」と呼ぶことにしましょう。

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前回を読む:持続できない原発(1)【12年に一度の確率】
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#17: 持続できない原発(第1回)

10/8/2017

 
【12年に一度の確率】
今年8月、米国テキサス州ヒューストンを襲ったハリケーン・ハービー。その郊外クロスビーにある化学薬品工場アルケマでは、プラスチック製品の製造などに用いられる有機ペルオキシドを扱っている。有機ペルオキシドは常温保管していると、特に夏場は暑さで不安定になり、急激に加熱され、爆発に至る。そのため、こちらの工場では常時冷蔵保存されており、さらに停電時に備えて二重で緊急冷却装置を設置している。
 
しかし、米国観測史上最大の降雨をもたらしたハービーにより、電力供給は途絶え、大洪水で緊急冷却装置は全て水没して故障。工場は、冷却できなくなった有機ペルオキシドの爆発は時間の問題だと警告。行政は、近隣住民に緊急強制退去を指示。
 
その後、工場は爆発・発火を繰り返し、呼吸器系に危険なガスや発がん性物質を大量にまき散らした。緊急強制退去させられた地元住民は、その間一時帰宅を試みたが、防護服やガスマスクなどに身をまとった警官などに遮られ、一時帰宅を断念した。アルケマは、未曽有の大洪水は予測不可能だったとして、責任逃れをしている。
 
このニュースは、2011年3月の福島原発事故を思い起こさせるものがあります。未曽有の自然災害により、電力供給が途絶えたこと。爆発することを知りながら、為すすべもなかったこと。緊急強制退去が指示され、一時帰宅が阻まれたこと。未曽有の大災害は予測不可能だったとして、責任逃れをしたこと。住民の命が一瞬のうちに生と死にさらされ、突如として幸せな地元での暮らしが奪われたこと。
 
今回のアルケマと福島原発。その深刻度の差は、有機ペルオキシドと核・放射能の違いが全てでしょう。けれども、地震や津波のみならず、観測史上最大の台風・降雨・洪水でも原発事故が起こり得ることを、今回のハービーは警告しています。
 
福島原発事故の無念を知り、ハービーの警告を経ても、次の事故が起こってから「予測不可能だった」で言い逃れることは、政府にしても、市民にしても、到底許されることではありません。火山の噴火やテロを含めて「予測不可能なこと」が起こることを「想定」することが、原発政策において堅実なのは、福島原発事故で学んだはず。それを想定すると、原発は持続できないのです。
 
原発が持続できない2つ目の理由は、福島原発事故により、今でも毎日大量生産され続けている、高濃度放射性物質に汚染された水です。2013年8月時点で、福島原発の地下水から、高濃度放射性物質に汚染された水が1日あたり約300トンも海に流出していることを政府は明らかにしました。漏れ始めた時期は特定できず、2011年3月の事故直後からずっと漏れ続けている可能性もあるという。
 
海産物を多く食する日本人や世界中の人にとって、また海の生き物や、海産物を食する鳥など生き物にとっても、たいへん恐ろしいことです。生き物にとって安全なレベルに達するまで、セシウムは300年、プルトニウムは24万年もかかります。その間、放射性物質は海を渡って、世界中を汚染し続けます。
 
高濃度放射性物質に汚染された水の流出を減らそうと、福島原発ではこの汚染水の放射性物質濃度を下げる処理をしています。しかし、濃度を下げたからといって、放射性物質は依然、生き物にとって安全なレベルにはできません。今の科学や技術では、それはできないのです。
 
そこで、処理された汚染水は、福島原発の敷地内のタンクに大量に溜め込まれています。2017年7月時点で、そのタンクに溜め込まれている汚染水は約78万トン。これは、25mプールの約3000個分に相当します。そして今なお、タンクに溜め込まれる汚染水は、毎日大量に増え続けています。
 
メルトダウンした原子炉建屋に流れ込み汚染水となってしまう地下水は、そのほとんどが海に流出したり、土にしみ込んだりしていて、いずれ地下水を源泉から汚染するでしょう。それを来る日も来る日も、周辺に増設した井戸でくみ上げて「少しでも」と減らしているのが、このタンクに溜め込む処理なのです。しかし、タンクから汚染水が漏れたり、放射性物質濃度を下げる処理装置から汚染水が漏れたり、タンクの容量が足りなくなってきたので汚染水を海に放出したりと、問題は後を絶たない。
 
他の方法も試みました。例えば、福島原発の地下を取り囲むように凍らせて、原発と海との間の水の流れを防ぐ凍土遮水壁。この凍結作業に350億円の税金を投入し実施するも、ほぼ効果はなかったと言われています。高濃度放射性物質に対して、井戸でくみ上げる技術しか、今の科学にはないのです。
 
「原発は安全だ。事故が起きたとしても100万年に一度の確率だ。」原発推進派は、こう言いながら、原発を世界中に約600基も建設しました。
 
しかし、世界初の原発が1954年に稼働してから63年が経ちますが、メルトダウンに至ったINESレベル5以上の事故は1957年のウィンズケール(英国、5)、1969年のリュサン(スイス、5)、1979年のスリーマイル(米国、5)、1986年のチェルノブイリ(ソ連、7)、そして2011年の福島(7)。(INES – International Nuclear Event Scaleとは原子力事故の国際的評価尺度であり、レベル7が最悪の事故を表す)。これは、12年に一度の割合であり、原発推進派の主張とはまったく異なる、とても許容できない頻度です。
 
これが、現実なのです。12年に一度、福島原発事故が再来するリスクを、目をそらさずにはっきりと見つめてほしい。
 
福島原発事故1件で、今の科学ではとても対応できない、甚大な被害を世界中の生き物や環境にもたらしていること。この事実と責任をしっかりと意識すると、原発が持続できないことは明らかではないでしょうか。

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    Author プロフィール

    JOE KIM
    Retired from business at age 34. Now, an active supporter of inclusive initiatives globally.
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    34歳でビジネスから引退。現在は、インクルーシブな支援活動家。
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