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【特権意識】
表面上は正当な響きのある言葉を用いて、根底では不当な現状を変えない。それは、一部の人たちに対して不当な扱いをしておきながら、それらを圧力で抑え込んでまで、見栄えだけは整った秩序を優先すること。そして、そのような「常識」をマジョリティが決め、マイノリティはそれに従うしかないと、知らず知らずのうちに身に沁みついてしまっている。 それが、遠い昔の時代から現在の世界に至るまで、マジョリティが構造的に優遇される社会が当然という、特権意識ではないでしょうか。 そして、その延長線上には、「下手をすれば、いずれマジョリティとマイノリティが逆転してしまうかも知れない」とする、現在のマジョリティが抱える恐怖心すら見え隠れします。その恐怖心から、あの手この手を使って、特権を必死に守ろうとするのかも知れません。 日本においては、人口の約98%が日本人とあって、その延長線上は遥か先のことに映りますが、それでも特権意識は古くから根付いています。一方のアメリカにおいては、その延長線上はいよいよ現実味を帯びています。人種差別が特に卑劣だった1960年代のアメリカは、人口の約85%が白人で構成される国でしたが、現在の同比率は約63%。そして、後もうひと世代ほどで白人もマイノリティに加わり、米国全体で捉えると、すべての人種がマイノリティになると予想されています。 現在、米国全50州のうち、唯一そうであるのがハワイ州。気候の快適さや自然の美しさもさることながら、アメリカの中で最も多様性を歓迎し、そして、差別が少ない州としても知られる理由でしょう。 そのような中、暗い過去の残骸である古くおぞましい白人至上主義を、助長するトランプ政権。移民・難民の排他や、マイノリティ有権者の抑圧など、まるで時代錯誤のような政策を、次々に導入しています。人道支援・人権擁護を重んじる、多くのアメリカ国民や州政府が必死に抵抗し、食い止めようとしているものの、それでもトランプ政権は、これら差別的な政策を支持する国民や州政府と共に、強引に推し進めています。 例えば、世界で最も殺人発生率が高い国々である、中米のエルサルバドルやホンジュラス。それらの国にたまたま生まれ育った人たちが、安全な暮らしを求めて、何も持たずに着の身着のまま、今までの生活すべてを置き去りにして、食料も水も充分にないまま数千キロもひたすら足で歩き続ける。そのように命からがら、生きる希望を求めてアメリカに辿り着いた、難民の人たち。しかし、その人たちを助けるどころか、その赤ちゃんや小さな子どもたちを、親族や保護者から引き離し、牢屋のような檻に閉じ込める。 あるいは、一部のマイノリティや貧困に苦しむ人たちが、選挙で投票しずらいように、いじめのような悪質な嫌がらせをする。それら有権者が多く住む区域に限り、投票所の数を減らして、数百キロも離れた場所を最寄りの投票所にしたり。さらには、それら区域に限り、投票機を少なく設置したり、壊れやすい古い投票機を配置して、待ち時間を延ばす。 特に、貧困に苦しむ多くの人たちは自家用車を持っておらず、それら区域には公共の交通手段も殆どなく、車を持っている知り合いにわざわざ事前に頼んで、投票所までの往復をお願いするしかない。それとは別に、事前の有権者登録や身分証明書も、各州政府がそれぞれ定めたものが必要。それらがすべて運良く手配できたとしても、投票所まで3時間程かかり、そこから投票までさらに8時間も外で並ばせる区域も、選挙の度に耳にするほどです。 アメリカでは投票日を火曜日と定めており、国の祝日にはしていません。生活の苦しい人たちは仕事を無給で休んで、往復や待ち時間込みで最長14時間程もかけて投票するしか、自分の声を政治に反映する術がないのです。とても、自称「世界一の民主主義国家」の政権がすることではありません。 しかし、どこの国や地域であっても、これらのような差別的な政策を「私たちは差別をしています」と表立って宣伝しながら、推し進める訳ではありません。差別をする人たちにとっても「差別」とは、とても恥ずかしく、醜いことだと承知しているのでしょう。そうであるからこそ、表面上は「法律を守る」とか「国民の安全第一」といった正当な響きのある言葉を用いて、根底ではマジョリティの特権を死守しようとするのかも知れません。 アメリカにおいて、差別的な政策を強引に推し進めるトランプ政権。その直近2年間の支持率は概ね40%、不支持率は概ね50%前後で推移しており、最も特権を有している「白人男性」に限ると、約60%が支持。さらには、自分自身のアイデンティティーを「白人であると強く認識する」と答えたアメリカ人のうち、約80%がトランプ支持。一方で、自分自身のアイデンティティーにおいて「人種は特に重要ではない」と答えた白人系アメリカ人に限ると、約5%以下がトランプ支持。 ここから浮かびあがるのは、多くの場合、自分たちのマジョリティ特権を死守すべく、マイノリティを排他しようとする意識ではないでしょうか。そして、そこからは、特権を失う恐怖心が透けて見えるのはないでしょうか。 続きを読む:差別をなくす(12)【逆転の恐怖】 前回を読む:差別をなくす(10)【逆差別】 全シリーズ:差別をなくす(1)~(12) [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] 同じテーマを読む:差別 Comments are closed.
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