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#50: 差別をなくす(第12回)

8/8/2019

 
【逆転の恐怖】
「下手をすれば、いずれマジョリティとマイノリティが逆転してしまうかも知れない。」その恐怖心から、マジョリティは必死に特権を守ろうとするのかも知れません。
 
けれども、よく考えてみてもらいたいのです。
 
例えば、「移民の国」として建国されたアメリカは、250年ほど遡っただけで、そこに住むほぼすべての人が移民なのです。それなのに、自分さえ「中」に入ってしまえば、これから入ろうとする人たちのためにドアを開けて待つどころか、急いでドアを叩き閉める。これでは、余りにも自己中心的にならないでしょうか。
 
そもそも、ある場所に「先に住みついた人たち」が特権を有することが、本当の意味において「正しい」のでしょうか。そして、「後から来た人たち」や「これから来る人たち」は、虐げられて「当然」なのでしょうか。
 
広い視野をもって考えてみると、私たち人類の歴史は約500万年。その悠久の時の流れを捉えたならば、アメリカのみならず、ほぼすべての国のすべての人たちが、元を辿れば、現在はアフリカ大陸として知られる土地からの移民です。
 
そう考えてみたならば、「後から来た人たち」や「これから来る人たち」が虐げられることが「当然だ」とは、とても言えないのではないでしょうか。そして、マジョリティが特権を有し、マイノリティが虐げられることが、世界の平和のためになるとは、歴史を辿ってみても、とても思えません。それは、「自分らしい生き方をしたい」と多くの人が望むからです。そして、誰も差別をされたくはないからです。
 
本当は、いつの時代もマジョリティが、マイノリティに差別なく接していれば、「逆転の恐怖」は芽生えないでしょう。現在の世の中では「マジョリティ優遇」が当然とされ、そして多くの場合、知ってか知らずか、マイノリティを差別してしまっているからこそ、「逆転の恐怖」を抱いてしまうのではないでしょうか。
 
それは、自分自身がマイノリティになると、「そんなひどい目」にあうのは嫌だからでしょうか。けれども、その「そんなひどい目」を、現在のマイノリティに押し付けてしまっているのは、自分も含むマジョリティなのです。
 
「確かに自分はマジョリティの一員だけど、それはたまたま生まれながらにそうなだけで、自分自身はマイノリティを差別していない」という人も多いでしょう。
 
そうであるのならば、「マジョリティ優遇」を受け入れたままにせず、差別を防ぎ、なくす努力をすることこそが、とても大切ではないでしょうか。それは、消極的な受け身であっても、差別を助長するような社会構造を受け入れ続けることそのものが、それを持続する負の力になってしまうからです。そして、たとえ個々の負の力は小さく感じたとしても、その積み重ねが、世界中で差別を持続する、とても大きな要因になっているからです。
 
それは、1960年代のアメリカにおいて、すべての差別主義を撤廃するべく、「平等」の履行を政府と社会に求め続けたマーティン・ルーサー・キングも、語っています。
 
「黒人の自由を妨げる最大の障害は、白人至上主義やKKKではないかも知れない。それは、正義よりも秩序を優先させる、穏健派と呼ばれる白人たちかも知れない。そして、最も悲しいことは、残忍な暴力を振るう『悪い人たち』がいることではなく、沈黙を守り続ける『良い人たち』がいることかも知れない。」
 
そう、「マジョリティ優遇」を受け入れたまま、沈黙を守り続ける「良い人」にならないためにも。「マジョリティもマイノリティも、どちらでも良い」となるには、マジョリティが構造的に優遇される社会を、変えること。その特権意識をなくすべく、積極的に行動すること。それは、すべての人たちにとって、フェアな社会を築くということ。
 
一人ひとりのより良い明日に向けて、多様な背景の人たちを迎え入れ、違いを受け入れ、互いに相手を大切にし、そして助け合うことが、私たち一人ひとりの責任なのではないでしょうか。平和を求め、全ての人たちの人権を大切にし、多様性を認めることこそ、人類の「歴史的使命」ではないでしょうか。
 
そう考えてみたならば、大切なことは、どこの国・どの地域・どの人種・どの性別・どの性的指向・どのような健康状態の人であろうが、一人ひとりを個人として認め、そして、その人にしっかりと向き合うことではないでしょうか。そうすることで差別を防ぎ、そして、なくすことができるのではないでしょうか。

前回を読む:差別をなくす(11)【特権意識】

全シリーズ:差別をなくす(1)~(12)
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