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【迷惑って?】
日本の美徳とされる「人に迷惑をかけない」が、いつしか「人から迷惑をかけられたくない」にすり替わってはいないだろうか。私たちの忙しい現代社会において、ややもすれば「迷惑をかける人は良からぬ人だ」となりがちです。そして、それは、差別を招く危うさをはらんでいます。 1991年まで、海外へ旅行することが一般に禁止されていた中国。ようやくそれが徐々に解禁され、待ちに待った憧れの海外旅行を楽しめる人たちが増えています。世界中のどこであれ、人びとが豊かになり自由を得て、広い世の中を自らが体感して見識を広げることは、とても素晴らしいことです。それは、世界の平和を築くうえで、欠かせないことでしょう。 そのような中、喜び勇んで中国から訪れる観光客に、旅先の住民たちが「迷惑」をかけられることもあるでしょう。それは、中国政府が今でも大型グループツアーを主に許可していることもあり、個人旅行をほぼ解禁していないため、大きな団体移動に起因しているのかも知れません。けれども、それによりすべての中国の人たちは迷惑だと示唆するのは偏見になり、すべての中国の人たちは「来ないでほしい」と言うことは差別になります。 より広い視野をもって過去を振り返ってみたならば、中国よりも30年ほど前の日本でも、海外渡航の自由化に、人びとは大いに沸きました。未知の世界へと、心を弾ませながら海外へ出かけ始めた頃は、勝手が分からずに、或いははしゃぎ過ぎて、ずいぶんと旅先の住民たちに「迷惑」をかけたでしょう。 その更に数十年前、多くのアメリカ人が一般的に海外旅行を楽しめるようになり始めた頃、ヨーロッパなどを旅して「迷惑」をかけたでしょう。その更に前の時代のヨーロッパの人たちも、同じくです。 どこの国の人であっても、過去のみならず、今でさえもそのようなことはあるでしょう。迷惑だと目くじらを立てるよりも、私たちの共通性に目を向けてみることで、差別は防げるのではないでしょうか。 そして、旅行者を受け入れる側は、観光によってもたらされる、幅広い経済効果の恩恵を忘れてはいけない。バブル崩壊から30年近くも経済が低迷を続けている日本は、不本意ながらも、世界でも類を見ない借金最大国になってしまいました。人口一人当たりの借金は約900万円で、3位アメリカの約1.5倍。また、国の総生産(GDP)と借金の比率は、世界で唯一200%を超えていて、17位アメリカの2倍を超え、危機的状況にいつ陥っても不思議ではない水準です。 さらには、少子高齢化や教育制度の行き詰まりもあり、成長路線が見出しにくいなか、日本は明確な意図をもって、国策として、海外からの観光客に経済成長の望みを託しつつあります。その成果は如実にあらわれ、日本を訪れる海外からの観光客数は、この15年間で年間500万人から3100万人へと、実に6倍超。街なかで、海外からのお客さんをよく見かけるようになったのは、当然の結果なのです。 その恩恵を受けているのは、旅行業界のみならず、交通や宿泊、飲食やショッピングなど、とても幅広い。更には、それが日本の税収にも繋がり、私たちが日頃よりお世話になっている公共サービスの財源にもなっています。 このように、たとえ自分自身が観光業を営んでいなくとも、自分の生活の基盤が、巡り巡って何らかの形で、海外から訪れる観光客に支えられている。そう意識したならば、あるべき気持ちは「迷惑」ではなく、むしろ「感謝」ではないでしょうか。 そう意識することで、差別は防げるのではないでしょうか。 続きを読む:差別をなくす(4)【なぜ いけないのか】 前回を読む:差別をなくす(2)【外に出てみる】 全シリーズ:差別をなくす(1)~(12) [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] 同じテーマを読む:差別 Comments are closed.
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