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#46: 差別をなくす(第8回)

5/18/2019

 
【入れ替わっただけ】
​
日本に生まれ育ち、日本の外には住んだことがない、ある外国籍マイノリティの方の話です。
「多くの日本人は、礼儀正しく、優しい。それでも私たちは、ずっと差別をされてきた。それはとても、ひどい差別もあった。仲間と共に耐え、慰め合い、貧困に喘ぎ、そして、血がにじむ思いで、超難関国立大学を卒業したものの、私たちを採用してくれる企業は、一社もなかった。自営をする他、生活を支える術がなかった。けれども、私たちを差別する、多くの日本人の気持ちも分かる。」
 
この話を聞き、そして振り返るたびに、差別と闘い続けたマーティン・ルーサー・キングのことが思い出されます。1960年代のアメリカにおいて、当時の黒人たちの怒りは、多くの白人たちからうける日々の迫害により、限界に達していました。そのような中、キングは、差別をする白人であっても、その本人が100%悪いわけではないと、黒人社会をこう説得したのです。 
「差別をする人は、差別をするように教えられてきたのだから。」
 
前述したマイノリティの方も、そしてキングも、自分に対して差別をする人たちの言動でさえも、一定の理解を示そうと努めている点において、共通するように思われます。差別をする人たちは、親・親族・学校・社会全般から「差別は仕方がないのだ」と、知らず知らずのうちに、教えられてきた経緯があること。そして、たとえ自分自身がその差別の被害者であっても、そのような経緯があるという事実を、理解しようと努力すること。それは「差別」を考えるうえで、重要ではないでしょうか。
 
けれども、前述したマイノリティの方は、こう続けます。
「私も日本人であったなら、外国人を差別するだろう。」
 
とても悲しいことに、この一言は、超えてはならない一線を、超えてしまっているのではないでしょうか。
 
それは、たとえ自分自身が、身をもって差別に苦しんだマイノリティであっても、立場が逆転して、自分がマジョリティにさえなってしまえば、今度は手の平を返したように、自分が差別をするということ。これでは、「差別をする側の人」と「差別をされる側の人」が入れ替わっただけであり、差別そのものは存在したままになってしまいます。
 
そして、この考えは、「自分さえ差別をされなければ、差別は問題ではなく、さらには、自分が自ら差別をする」という、差別そのものを肯定することにもなってしまう。屈辱と悲しみをもたらした差別の、本質を見失ってはいないでしょうか。
 
これでは、キングに共通するどころか、その真逆になってしまいます。キングに共通するのであれば、仮に自分がマジョリティであっても「絶対に差別はしない」と、心に強く誓うのではないでしょうか。キングと共に公民権運動を、非暴力抵抗で闘った、多くの心ある白人たちもそうでした。マジョリティとして生まれ、自分自身は差別の対象ではなくとも、「絶対に差別はしない」と心に誓うのみならず、黒人たちと一緒になって、差別と闘い続けたのです。
 
「私も日本人であったなら、外国人を差別するだろう。」このとても悲しい一言は、むしろ、日本における戦争肯定論者たちによる、「戦争そのものが悪だったわけではなく、敗戦したことが悪だった」とする主張に、相似するように思われます。日本のみならず、これに似たような主張は、軍隊を積極的に支持する多くのアメリカ人からも、聞くことがあります。
 
「勝ち」さえすれば、戦争における大量殺人は、問題ないのでしょうか。
「マジョリティ」でさえあれば、差別により人を傷つけても、問題ないのでしょうか。
 
けれども、「差別をする側の人」と「差別をされる側の人」が入れ替わっただけでは、差別はなくなりません。
 
差別は、そして差別を必ず人殺しの道具として利用する戦争は、あってはならないのです。加害者と被害者が入れ替わっただけでは、問題は解決しません。
 
入れ替えではなく、防いで、そして、なくすこと。その、とても大切な違いに気が付けたなら、差別をなくすことはできるのではないでしょうか。

続きを読む:差別をなくす(9)【地区限定であっても】
前回を読む:差別をなくす(7)【意図的に造られた】

全シリーズ:差別をなくす(1)~(12)
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    JOE KIM
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    34歳でビジネスから引退。現在は、インクルーシブな支援活動家。
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