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日本文化において、最上の美徳とも言われる「和を大切にする心」。
「和」とは、「平和」の「和」であり、基本的には「みな仲良くしましょう」の精神です。「人の和」、「家族の和」、「社会の和」など。「和」は、互いに相手を大切にし、協力し合う関係にあることを意味しています。それはとても暖かく、幸せをもたらせる、本当に素晴らしい心です。 「和」において何よりも重要なのは、一人ひとりを大切にして、一人ひとりの幸せに向けて、皆で協力し合うことです。「和」という集団を大切にするが余り、一人ひとりが犠牲になったり、誰かが排他されたりすることは、本来の「和」の精神からすれば、本末転倒と言えるでしょう。 一部の人たちを犠牲に、あるいは排他して、「和」という集団を大切にしている状態を「悪しき和」と言います。この「悪しき和」を守ることは、とても美徳とは言えません。「悪しき和」を許容することは、目の前で犠牲になっている人がいるにもかかわらず、何もしないことと同じです。これでは、互いに相手を大切にし、協力し合い、幸せをもたらせることはないでしょう。 「和を大切にすること」が、いつしか「何もしないこと」にすり替わってはいないだろうか。 1776年7月4日。アメリカは国家の独立宣言において「すべての人が、平等な命を与えられていることは、明白である」と世に示しました。とても素晴らしい考えです。 しかし、不平等の極みである奴隷制度が廃止されるまで、その後、約100年間もかかります。そして、そこから更に約100年後の1960年代。当時において、いまだに参政権もないアフリカ系アメリカ人に対する不平等をはじめとする、すべての差別主義を撤廃するべく、独立宣言における「平等」の履行を、人びとは政府と社会に求めました。その公民権運動のリーダーであるマーティン・ルーサー・キングは、当時、こう語っています。 「黒人の自由を妨げる最大の障害は、白人至上主義やKKKではないかも知れない。それは、正義よりも秩序を優先させる、穏健派と呼ばれる白人たちかも知れない。そして、最も悲しいことは、残忍な暴力を振るう『悪い人たち』がいることではなく、沈黙を守り続ける『良い人たち』がいることかも知れない。」 一部の人たちに対して不当な扱いをしておきながら、それらを圧力で抑え込んでまで、見栄えだけは整った秩序を優先する「和」。このような「和」を保つには、誰かが犠牲になっていたり、排他されていても、人びとは目をそむけて、何もしません。まさに「悪しき和」だと言わざるを得ません。 一方で、正義を優先する「和」は、誰かが犠牲になっていたり、排他されていることを、人びとは見過ごしません。一人ひとりを大切にして、一人ひとりの幸せに向けて、皆で協力し合うからです。「みな仲良くしましょう」の精神だからです。互いに相手を大切にし、協力し合う関係を、話し合って、意見を述べ合って、共に形成してゆくからです。 キングと共に公民権運動を、非暴力抵抗で闘った、多くの心ある白人たちもそうでした。自ら体験することはなくとも、黒人たちの屈辱を、自分の身に置き換えて想像することにより、マイノリティの気持ちを察することができたのです。そして、自分自身は差別の対象ではなくとも、「悪しき和」を許容せず、本来の「和を大切にする心」を持ったのです。 現在、世界中で多くのマイノリティを、マジョリティである大多数が、圧倒的な数の力でねじ伏せ続けています。ロヒンギャの人びとに対する、ミャンマー政府による残虐な弾圧。シリアやスーダンやイエメンなど、戦争に飲み込まれた故郷から、着の身着のまま逃れた難民たちの受け入れを拒否する、豊な国々に生まれた、恵まれた私たち。アフリカ系アメリカ人や在日外国人に対する、根深い差別。生まれや国籍などによる、アメリカ入国禁止令。米軍基地を沖縄に押し付け続ける日本社会。 これらは「和を大切にする心」ではありません。 一人ひとりを大切にしていないからです。一人ひとりの幸せに向かっていないからです。誰かが犠牲になり、排他されているからです。互いに相手を大切にし、協力し合う関係を、本気で形成しようとしていないからです。 もちろん、マイノリティだけではありません。人口の半数を代表するにもかかわらず、世界中において、女性に対する抑圧が数千年間も続いています。現代においても、男女平等を謳いながらも、多くの女性たちが搾取され続けています。 「和を大切にする心」とは、多様な背景の人たちを迎え入れて、「違い」を受け入れて、一人ひとりのより良い明日へ向けて、皆で協力し合うことではないでしょうか。 同じテーマを読む:多様性/インクルーシブ Comments are closed.
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