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#36: 相続をしない理由(第7回)

10/28/2018

 
【可愛いからこそ】
「自分は恵まれているのかも知れないが、決して裕福とはいえない。」このように感じている人は、結構多いのではないでしょうか。
 
そこで「恵まれた境遇にある私たち」とは、具体的に誰のことなのでしょう。
 
私たちのこの世界を、広い視野で捉えたのなら、所有財産が33万円以上(約3000ドル)であれば、世界中で生きている人の半数より、あなたは恵まれています。所有財産が760万円以上(約6万8000ドル)であれば、あなたは世界トップ10%の富裕層です。
 
「自分は富裕層というほどではない。少しばかりの財産をもっている、庶民だ。」
 
その財産が莫大であっても、あるいは少しだと感じていても、広い視野を持つことができれば、豊かとされる国々に住む人たちの多くは恵まれているのです。そして、個々がどれ程ささやかだと感じたとしても、私たちの相続の積み重ねが、この世界における「絶望」を、世代をまたいで持続する、とても大きな要因になっています。
 
私たちが、世代をまたいだ相続をやめれば「機会の格差」はほぼなくなり、「格差社会」もほぼ解消され、世界は史上類を見ないほど安定するでしょう。それは、私たち一人ひとりにできることなのです。
 
「絶望」の根底に存在する、生まれながらにして乗り越え難いほどの「機会の格差」を是正すること。そのためには、富の再配分がとても重要です。再配分により、恵まれない境遇で育った子にも、同じ質の教育が与えられる。そうすることにより、例えどこに生まれたとしても、仕事・収入・生活・保有資産を獲得する機会に恵まれる。
 
「機会の格差」が是正されると、「格差社会」が固定化しなくなる。そうすると「自分も努力すれば報われる」という「希望」が持てる。そして、世界中で「希望」が増えるということは、世界中にある「絶望」が減るということ。「絶望」が減ると、社会は安定します。
 
この世から去った後ですら、恵まれない境遇にある人たちに向き合わず、自分の子さえ良ければいいという「自己中心的な愛情」に固執することが、私たちにとって本当に大切なのでしょうか。一生を終えてもなお残った財産は、相続ではなく、恵まれない境遇の人たちに還元することが、大切なのではないでしょうか。
 
自らのモラルを高めて、自主的に還元したい先を選び、恵まれない境遇の人たちへ寄付をすることが、富の再配分として最も効果的ではないでしょうか。行ったこともない、知り合いもいない、遠く離れた国々に住む人たちへでも、信頼のおける団体を通して寄付ができる。今は、そういう素晴らしい時代です。
 
相続税も再配分の方法としてありますが、政府による税金の無駄遣いや、相続のためにあの手この手を駆使する富裕層がいることを考えると、モラルという中身は空洞のまま外堀だけを埋めても、それはモロくて崩れやすい。一方で、中身を伴う自発的な寄付は、長期的な視点においても、揺るぎない軸があります。
 
「相続をしないだなんて、自分の子が可愛くないのですか。」このような疑問を抱く人もいるようです。
 
自分の子は、可愛い。とても、とても可愛い。本当に大切で、心から愛している。
 
だからこそ、「親による子の支配・自律や自立の妨げ・兄弟姉妹間の争い・財産目当て」に陥らない、芯の強い大人に育つよう接したい。
だからこそ、自分の子さえよければ、世界中の「絶望」に目をつぶってしまう、自己中心的な人間にならないよう接したい。
だからこそ、テロの危険にさらされず、またそのためにも、戦争という名の人殺しを許容しない、勇気ある人間に育つよう接したい。
だからこそ、世界中の「絶望」を少しづつでも「希望」に代えてゆきたいと願う、広い心が育つよう接したい。
だからこそ、自分の力で生きる充実感や喜びを身に付けられる、前向きな大人に育つよう接したい。
​だからこそ、自分自身を大切にし、そして世界中の人たちも大切にできる、優しい大人に育つよう接したい。
 
自分の子が可愛いからこそ、相続はしないのです。自分の子を愛しているからこそ、この世における人生を締めくくる時には、この世界から頂いたものを、この世界に返すのです。
 
それが、今ここに生きる私たちにできることではないでしょうか。

前回を読む:相続をしない理由(6)【私たちにできること】

全シリーズ:相続をしない理由(1)~(7)
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同じテーマを読む:相続

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    Retired from business at age 34. Now, an active supporter of inclusive initiatives globally.
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    34歳でビジネスから引退。現在は、インクルーシブな支援活動家。
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