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【命 or 生活?】
新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてから、約半年になります。夏に入ってからも、その勢いは収まらず、世界中で少なくとも1580万人が感染し、64万人もの人たちが犠牲になってしまいました。 一人ひとりの健康や命が失われるこの悲しみを、出来る限り防ぎたい。その一方で、人びとの生活を支える会社や仕事も、出来る限り再開したい。最近、このジレンマに引き裂かれる思いを、至る所で耳にします。 人びとの「命」か、それとも「生活」か。 そこに、ひとつのヒントを与えてくれる国があります。スウェーデンです。 スウェーデンは、他のヨーロッパ諸国とは対照的に、ロックダウンや規制などをほぼ実施せずにコロナ危機を乗り切ることをいち早くから選んだ、数少ない国。同じく北欧に位置する隣国のノルウェー・フィンランド・デンマークは、ロックダウンや規制を実施していますが、スウェーデンは一線を画し、生活と経済の通常運転を選択しました。 とはいっても、事実をきっちりと把握し、それを人びとに開示することは民主主義の根幹ですので、もちろん検査はしっかりとしています。人口に対する検査実施率は、スウェーデン約6%、ノルウェー7%、フィンランド6%、デンマークは先進国最高の23%。ちなみに、日本は先進国最低の0.7%、アメリカは14%。 それなりの検査を実施している北欧4諸国ですが、検査数に対する陽性率は、スウェーデンが約13%と際立って高く、残りの3諸国は1~2%です。また、人口100万人当たりの死者数は、スウェーデンがこれまた危険なまでに高い55万人、ノルウェー4万人、フィンランド6万人、デンマーク10万人。 これらの事実から分かることは、コロナ危機への対応をしなかったスウェーデンは、対応をした隣国と比較すると、コロナ感染・死亡の確率がおおよそ6~13倍であるということ。 そこで、冒頭に述べたジレンマです。人びとの「命」か、それとも「生活」か。 隣国と比較し、人びとの命をより犠牲にしたスウェーデン。その命と引き換えに、はたして生活は救われたのでしょうか。具体的には、コロナ感染・死亡の確率が6~13倍という極めて厳しい事実を補って余りあるほど、人びとの生活やスウェーデンの経済は、隣国と比較して潤っているのでしょうか。 悲しいことに、まったくそうではありません。それどころか、スウェーデンの生活と経済は、隣国と比較してほぼ同じ位、コロナ危機の被害を受けています。 6月時点における失業率は、スウェーデンが約9%、ノルウェー5%、フィンランド7%、デンマーク6%。また、今年のGDP成長率の見通しは、スウェーデンがマイナス5%、ノルウェーがマイナス6%、フィンランドがマイナス6%、デンマークがマイナス5%。 これらが伝えていることは、スウェーデンは人びとの命を甚大なまでに犠牲にしたにもかかわらず、生活と経済のメリットは、ほぼなかったという現実です。そして「命」と「生活」がジレンマではなく、本当のところは一体だということでしょう。 それは、自国だけがロックダウンや規制をしないといっても、経済や生産のサプライチェーンはグローバルにつながっているということ。他国の協力なしでは、自国における生産や消費だけでは、生活は回らないのです。そして、たとえロックダウンや規制がなくとも、健康・命における安心感を持てなければ、多くの人びとは消費を極力控えるのでしょう。 スウェーデンが私たちに与えてくれた、大切なヒント。それは、世界中の人びとが共に協力すべきこのつながった社会において、「命」の甚大な犠牲に見合う「生活」など、あり得ないということではないでしょうか。 前回を読む:コロナ危機から学ぶ(3)【地球温暖化】 全シリーズ:コロナ危機から学ぶ(1)~(4) [1] [2] [3] [4] 同じテーマを読む:ある視点 Comments are closed.
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