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#81: 分断なき多様性に向けて(第3回)

2/10/2022

 
【違い】
多様性を歓迎するということは、様々な背景の人たちを歓迎するということです。
 
私たちは、その背景を国籍や人種で考えがちですが、その他にも民族・出身・宗教など、人びとの背景は多種多様に捉えることができます。そして、多様性を認めるほど、ある種の「くくり」が意識される傾向があるのも、事実です。
 
例えば、「日本人」・「アメリカ人」・「ドイツ人」といった、国籍のくくり。あるいは、「アジア人」・「黒人」・「白人」といった、人種のくくり。また、「裕福」や「貧困」といった、経済的境遇のくくり。さらには、前回や前々回に述べた「キリスト教徒」や「イスラム教徒」といった、宗教のくくり、など。
 
多様性を歓迎するということは、これら「くくり」の個別性や特徴を尊重し、そして、それらに基づく文化を好意的に迎え入れるということ。また、一つひとつの「くくり」の中にある人たちを同一とするのではなく、同じ「くくり」の中にあっても、さらに一人ひとりに個性があることを認め、そして尊重すること。
 
それは「違い」を認めるところから始まります。ここに既に存在する「違い」を認め、これから生まれる「違い」をも受け入れ、それらを好意的に迎え入れることが、多様性を歓迎するには、とても大切です。
 
私たちは誰しも「自分らしい生き方をしたい」と望みます。だからこそ、人はそれぞれの「違い」を認められ、自由であるほど、一人ひとりの幸せのためには、少なからぬ不自由をも受容するのかも知れません。それは、多様性は一致をもたらし、同一性は分断をもたらすということでもあります。
 
「違い」を受け入れる姿勢を持つことにより、多様な背景の人たちを迎え入れて、一人ひとりのより良い明日へ向けて、皆で話し合い、協力し合うようになります。
 
ところが、この好循環のバランスを崩すと、これらの「違い」は多様性を歓迎するのではなく、むしろ分断を生んでしまいます。例えば、過去に比べると大きく改善されているとはいえ、現在のアメリカにおいて、一部の白人系米国人コミュニティでは、いまだに黒人系米国人の背景を素直に受け入れようとしません。
 
黒人系米国人の背景において、過去の奴隷制度や、現在でもはびこる人種差別などによる屈辱は、その歴史を語るうえでは切っても切り離せません。けれども、テネシー州・フロリダ州・アイダホ州など、白人特権にしがみつく人々がマジョリティを占める州を中心として、多くの白人系米国人が不快と感じるような歴史的事実は、法律により、学校で教えることを禁じている。
 
過去の過ちを二度と繰り返さない決意と覚悟をもったなら、歴史の事実を回避することなく、討論を組み込み、意見を述べ、深く掘り下げて、事実を直視した正直な学校教育が、とても重要です。易きに流され、厳しい事実から目をそむける方法ではなく、厳しくも事実に向き合う方法を選ぶことこそが、自らの誇りを築いてゆくからです。そう考えたなら、白人特権にしがみつく学校教育は、とても浅はかでしょう。
 
また、一部の白人系米国人コミュニティでは、黒人系米国人の文化を、アメリカ文化のひとつとして取り入れようとしない。アメリカ文化は、すべて白人系文化であるが如く振る舞う人たちが、残念なことに少なからずいます。
 
これらは紛れもなく、黒人系米国人の背景を素直に受け入れようとしない姿勢です。そうすると、自分たちの背景が認められないことから、それを認めさせようと、より一層、黒人系米国人たちが自らの「違い」を主張したくなるのは、ごく自然の流れでしょう。
 
このような流れは、黒人系のみならず、ヒスパニック系米国人やアジア系米国人など、多くのマイノリティにおいても、同じことが起きています。白人系の文化との違いを意識的に主張し、自分たちの文化も、白人系の文化と同じく、アメリカ文化のひとつであることを切実に訴える。
 
そして、似たような潮流は、世界中で起きています。日本人と、在日コリアンとの間の隔たり。イスラエル系ユダヤ人と、パレスチナ系イスラム教徒。中国人と、香港の人たち。裕福な家庭で生まれ育った人と、貧困家庭で生まれ育った人、など。これらの隔たりから、自らの「違い」を認めさせようと、必死に主張するのです。
 
けれども「違い」を主張すればするほど、その「違い」へのこだわりがより一層深まり、それがかえって分断を生む材料になりかねない。そもそも最初から、すべての人たちが、お互いの個別性や特徴を尊重し、それらに基づく文化を好意的に迎え入れていれば「分断」ではなく「多様性」となったものを、そうしないことで好循環のバランスを崩してしまう。
 
分断のない多様性を目指すには、様々な背景の人たちの個別性や特徴を尊重し、そして、それらに基づく文化を好意的に迎え入れることが、大切ではないでしょうか。


続きを読む:分断なき多様性に向けて(4)【国境】
前回を読む:分断なき多様性に向けて(2)【視点】
 
全シリーズ:分断なき多様性に向けて(1)~(7)
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同じテーマを読む:多様性/インクルーシブ

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    JOE KIM
    Retired from business at age 34. Now, an active supporter of inclusive initiatives globally.
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    34歳でビジネスから引退。現在は、インクルーシブな支援活動家。
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