|
【12年に一度の確率】
今年8月、米国テキサス州ヒューストンを襲ったハリケーン・ハービー。その郊外クロスビーにある化学薬品工場アルケマでは、プラスチック製品の製造などに用いられる有機ペルオキシドを扱っている。有機ペルオキシドは常温保管していると、特に夏場は暑さで不安定になり、急激に加熱され、爆発に至る。そのため、こちらの工場では常時冷蔵保存されており、さらに停電時に備えて二重で緊急冷却装置を設置している。 しかし、米国観測史上最大の降雨をもたらしたハービーにより、電力供給は途絶え、大洪水で緊急冷却装置は全て水没して故障。工場は、冷却できなくなった有機ペルオキシドの爆発は時間の問題だと警告。行政は、近隣住民に緊急強制退去を指示。 その後、工場は爆発・発火を繰り返し、呼吸器系に危険なガスや発がん性物質を大量にまき散らした。緊急強制退去させられた地元住民は、その間一時帰宅を試みたが、防護服やガスマスクなどに身をまとった警官などに遮られ、一時帰宅を断念した。アルケマは、未曽有の大洪水は予測不可能だったとして、責任逃れをしている。 このニュースは、2011年3月の福島原発事故を思い起こさせるものがあります。未曽有の自然災害により、電力供給が途絶えたこと。爆発することを知りながら、為すすべもなかったこと。緊急強制退去が指示され、一時帰宅が阻まれたこと。未曽有の大災害は予測不可能だったとして、責任逃れをしたこと。住民の命が一瞬のうちに生と死にさらされ、突如として幸せな地元での暮らしが奪われたこと。 今回のアルケマと福島原発。その深刻度の差は、有機ペルオキシドと核・放射能の違いが全てでしょう。けれども、地震や津波のみならず、観測史上最大の台風・降雨・洪水でも原発事故が起こり得ることを、今回のハービーは警告しています。 福島原発事故の無念を知り、ハービーの警告を経ても、次の事故が起こってから「予測不可能だった」で言い逃れることは、政府にしても、市民にしても、到底許されることではありません。火山の噴火やテロを含めて「予測不可能なこと」が起こることを「想定」することが、原発政策において堅実なのは、福島原発事故で学んだはず。それを想定すると、原発は持続できないのです。 原発が持続できない2つ目の理由は、福島原発事故により、今でも毎日大量生産され続けている、高濃度放射性物質に汚染された水です。2013年8月時点で、福島原発の地下水から、高濃度放射性物質に汚染された水が1日あたり約300トンも海に流出していることを政府は明らかにしました。漏れ始めた時期は特定できず、2011年3月の事故直後からずっと漏れ続けている可能性もあるという。 海産物を多く食する日本人や世界中の人にとって、また海の生き物や、海産物を食する鳥など生き物にとっても、たいへん恐ろしいことです。生き物にとって安全なレベルに達するまで、セシウムは300年、プルトニウムは24万年もかかります。その間、放射性物質は海を渡って、世界中を汚染し続けます。 高濃度放射性物質に汚染された水の流出を減らそうと、福島原発ではこの汚染水の放射性物質濃度を下げる処理をしています。しかし、濃度を下げたからといって、放射性物質は依然、生き物にとって安全なレベルにはできません。今の科学や技術では、それはできないのです。 そこで、処理された汚染水は、福島原発の敷地内のタンクに大量に溜め込まれています。2017年7月時点で、そのタンクに溜め込まれている汚染水は約78万トン。これは、25mプールの約3000個分に相当します。そして今なお、タンクに溜め込まれる汚染水は、毎日大量に増え続けています。 メルトダウンした原子炉建屋に流れ込み汚染水となってしまう地下水は、そのほとんどが海に流出したり、土にしみ込んだりしていて、いずれ地下水を源泉から汚染するでしょう。それを来る日も来る日も、周辺に増設した井戸でくみ上げて「少しでも」と減らしているのが、このタンクに溜め込む処理なのです。しかし、タンクから汚染水が漏れたり、放射性物質濃度を下げる処理装置から汚染水が漏れたり、タンクの容量が足りなくなってきたので汚染水を海に放出したりと、問題は後を絶たない。 他の方法も試みました。例えば、福島原発の地下を取り囲むように凍らせて、原発と海との間の水の流れを防ぐ凍土遮水壁。この凍結作業に350億円の税金を投入し実施するも、ほぼ効果はなかったと言われています。高濃度放射性物質に対して、井戸でくみ上げる技術しか、今の科学にはないのです。 「原発は安全だ。事故が起きたとしても100万年に一度の確率だ。」原発推進派は、こう言いながら、原発を世界中に約600基も建設しました。 しかし、世界初の原発が1954年に稼働してから63年が経ちますが、メルトダウンに至ったINESレベル5以上の事故は1957年のウィンズケール(英国、5)、1969年のリュサン(スイス、5)、1979年のスリーマイル(米国、5)、1986年のチェルノブイリ(ソ連、7)、そして2011年の福島(7)。(INES – International Nuclear Event Scaleとは原子力事故の国際的評価尺度であり、レベル7が最悪の事故を表す)。これは、12年に一度の割合であり、原発推進派の主張とはまったく異なる、とても許容できない頻度です。 これが、現実なのです。12年に一度、福島原発事故が再来するリスクを、目をそらさずにはっきりと見つめてほしい。 福島原発事故1件で、今の科学ではとても対応できない、甚大な被害を世界中の生き物や環境にもたらしていること。この事実と責任をしっかりと意識すると、原発が持続できないことは明らかではないでしょうか。 続きを読む:持続できない原発(2)【本当のコスト】 全シリーズ:持続できない原発(1)~(4) [1] [2] [3] [4] 同じテーマを読む:環境 Comments are closed.
|
ENG/JPN Posted Alternately
日本語/英語を交互に掲載 Author プロフィール
JOE KIM Theme テーマ
All
Visits アクセス15,384 (as of 4/1/2026) |
© COPYRIGHT ALL RIGHTS RESERVED.
RSS Feed