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【本当のコスト】
原発が持続できない3つ目の理由は、原発にかかる本当のコストです。原発推進派のみならず、一般市民もが「原発がなければ、他のエネルギー源を増やさないと、電力供給が不足する」と言います。そして「原発がなければ、電気代が高くなる」と言います。果たして、それら二つの主張は、本当に正しいのでしょうか。 先ずは、一つ目の主張として、代替エネルギーがないと電力供給が不足するから、日本は原発をやめられない。これは、本当に正しいのでしょうか。 結論から言うと、これが正しくないことは、すでに実証されています。2012年5月に泊原発を定期検査のため停止してから、2015年8月に川内原発を再稼働するまでの間、3年以上も日本は稼働原発ゼロでした。その間、節電をしたり、街中のネオン等を少し控えめにしたりはありましたが、夏場や冬場のピーク電力を含めて問題なく足りました。しかも、火力など代替エネルギーを増やすことなく、電力供給は足りたのです。 その実績を踏まえても、なお、もっと電力がないと不安だという場合。また、経済がさらに発展したら、今よりもっと電力が必要になるという場合。その対応策として、火力発電所や太陽光発電システムの増設などにより、安全かつ低コストで電力を増やせます。 次に、二つ目の主張として、原発がなければ電気代が高くなるから、日本は原発をやめられない。「これこそは正しい」と多くの一般市民が信じているようです。そこで、3つの根拠を示して、この主張について考えてみたいと思います。 そもそも一般市民がこの主張を信じるに至ったのは、メディアや報道などを経由して、もとをたどれば経済産業省の「エネルギー白書」にあるのではないでしょうか。「エネルギー白書」によれば、火力の発電コストは、原子力に比べておおよそ1.4倍だと説明しています。 そうすると、仮に原発をゼロにして、その分の電力を火力で発電した場合。電気代がひと月1万円の一般家庭で4千円増、ひと月2万円の家庭で8千円増の計算になります。この段階までの情報で「それだと高すぎて、原発をやめられない」と考える人と、「家計には痛いが、原発の恐ろしいまでのリスクを考えると、保険料を払うようなもの」と考える人と、意見の割れるところでしょうか。 そこで、安全対策費用について考えます。福島原発事故により、原発はさらに強度な安全対策が必要であることが明らかになりました。また、日本の原発は稼働から平均32年、アメリカは平均38年経っており、原発の耐用年数が40年とされるなかで、老朽化していることは間違いのない事実です。それらを加味すると、ますます安全対策費用は膨大になる。 2016年7月時点で、日本で稼働可能な原発43基に必要とされる安全対策費用は合計で3.3兆円だと、これらの原発を運営する電力会社により見積もられています。しかし、このコストは発表の度に膨れ上がっており、この金額内で収まるとは到底考えられません。そして、この金額の多くは、先ほどの1.4倍の計算根拠となる「エネルギー白書」における原子力の発電コストには含まれていません。 実際にかかる安全対策費用を含めると、とたんに火力と原子力の発電コストは逆転するでしょう。これを「逆転の根拠 その1」と本文中では呼ぶことにしましょう。 次に、原発事故が起こってしまった場合の事故処理コストについて考えます。福島原発事故1件につき、2013年時点で、政府は試算で、賠償に5.4兆円、除染に2.5兆円、合計7.9兆円と発表しました。しかし、これが2016年時点で、賠償に8兆円、除染に7兆円、合計15兆円と、ほぼ倍増します。 しかも、ここには事故廃炉コストが一切含まれていない。住民の健康チェックや健康被害への手当とする医療費も、その多くは含まれていない。凍土遮水壁の350億円すら含まれていない。これらのことから、政府が発表している福島原発事故の処理コストは、到底信頼できるものではありません。これからも発表の度に、コストはどんどん膨れ上がるでしょう。 特にコスト面のみでとらえると、事故廃炉コストは想像を絶するほど莫大になるでしょう。例えば、福島と唯一同じであるINESレベル7の事故を起こしたチェルノブイリ。こちらは事故廃炉の方法として、放射能漏れをできるだけ封じ込めるよう、「石棺」と呼ばれるコンクリートの建造物で、爆発した原子炉建屋を丸ごと覆って固めました。 その石棺の耐用年数は30年とされており、現時点で既に過ぎています。メルトダウンした核燃料は、ほぼそのまま石棺の中に残っており、雨水が原子炉内部を通って、周辺の土壌を高濃度放射性物質で汚染し続けている。また、老朽化した石棺は、湿気などからコンクリートや鉄筋が腐食しており、放射能漏れは確実に続いている。万が一崩壊すれば、大量の高濃度放射性物質をまき散らす危険がある。 現在チェルノブイリで建設されているのが、耐用年数100年のシェルターで、老朽化した石棺を丸ごと覆うという新たな計画。こちらの建設費は当初の試算で8億ドル(約900億円)でしたが、建設が進むにつれ、コストはみるみる膨れ上がりました。本年中に完成を目指すこのシェルター、現在まで実際にかかった建設費は23憶ドル(約2600億円)で、当初試算の約3倍になっています。それを、プルトニウムが生き物にとって安全なレベルに達するまで、仮に24万年間、コツコツと続けた場合、約2千4百回もシェルターを建て替えることになります。そうした場合のシェルター建設費は、現在の通貨価値で計算して5.5兆ドル(約624兆円)。 そこには、24万年間のシェルター運営費は含まれていません。高濃度放射性物質を扱うシェルターですから、安全管理のための科学者や厳重な警備、その人件費や機材費などを加味するとします。それらに、仮に年間運営費が10億円かかると想定すると、現在の通貨価値で計算して、24万年間で240兆円になります。 もちろん、たとえ24万年という気の遠くなる程の年月をかけて、それをやり終えたとしても、メルトダウンした核燃料を廃棄するコストの試算どころか、方法すらも今の科学にはありません。 ここで、推定でも何とか試算してみた事故処理コストを合計してみましょう。信頼性の低い政府試算による賠償・除染の15兆円。事故廃炉コストを構成するシェルター建設費624兆円と、まったくの想定値であるシェルター運営費240兆円。これらを合計すると、事故処理コストは879兆円。そこに、現在においては試算不能なメルトダウン核燃料廃棄コストを含めると、まったく見当すらできない莫大な金額になるでしょう。 しかも、莫大な金額を前にして忘れがちになるのは、これは福島原発事故1件分のコストだという事実です。12年に一度、同じような事故が再来するリスクは、ここにはまったく加味されていません。この1件だけを電気代に上乗せして含めるだけでも、まったくお話にならない程、火力と原子力の発電コストは大逆転します。これを「逆転の根拠 その2」と呼ぶことにしましょう。 続きを読む:持続できない原発(3)【オンカロ】 前回を読む:持続できない原発(1)【12年に一度の確率】 全シリーズ:持続できない原発(1)~(4) [1] [2] [3] [4] 同じテーマを読む:環境 Comments are closed.
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