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【オンカロ】
最後に、幸いなことに事故が起こらなかったとしても、耐用年数40年を迎えると、必ずかかる安全廃炉コストについて考えます。現在の日本では原発11基が、廃炉を決定しています。そして、安全廃炉を完了するには、原発の解体と核廃棄物の保管が必要となります。 先ずは、ステップ1である原発の解体。2016年時点で、世界中に建設された原発の4分の1にあたる150基が廃炉を決定していますが、実際に解体が終了したのは、わずか17基。その17基は、おおよそ1基あたり10億ドル(約1130億円)の解体コストがかかったと発表されています。最近の参考事例として、2014年12月に安全廃炉を決定した、米国バーモント州にあるバーモント・ヤンキー原発。こちらの解体コスト予算は、概算で12億ドル(約1350億円)。ちなみに、日本はひとつも解体を終了していない。 日本にある原発54基(稼働可能な43基と廃炉決定した11基)は、稼働から平均32年が経っていることを考えると、廃炉を決定する原発が次々とでてくることは、もはや確実です。そして、その解体コストは540億ドル(約6.1兆円)かかる計算になります。 次に、ステップ2である核廃棄物の保管。世界中に建設された約600基の原発どれ一つをとってみても、生き物にとって安全なレベルに達するまで、核廃棄物を保管する現実的な方法は準備されていません。唯一それに近い試みが、フィンランドに建設中の「オンカロ」でしょう。 フィンランドは、早くから安全廃炉について、真剣に国内で議論を重ねてきた国です。核廃棄物を保管するオンカロと呼ばれる地下貯蔵所。その建設地の選定作業は、1983年に開始。同国南西部に位置するエウラヨキのオルキルオト島を、その地として決定したのが2001年のこと。そして2004年から、深さ520メートルのトンネル掘削工事に着工。2016年には、トンネル奥の地下に、貯蔵所の建設を開始。完成は2020年頃を目指しており、そこから100年間、同国内の全ての核廃棄物は、ここに保管されることになる。そして、100年後の2120年頃にオンカロは封鎖され、約10万年に渡って隔離する予定。 建設費は8億ユーロ(約1060億円)を予定しているが、予算オーバーなどを考慮して、既に14億ユーロ(約1860億円)の積立金を確保している。ただし、封鎖されるといっても、施設の老朽化への対策が求められる時が、いずれどこかで来るでしょう。さらに、プルトニウムが生き物にとって安全なレベルに達するまでには24万年もかかることを考えると、オンカロの想定より2.5倍の耐久性が必要です。これらを考慮して、実際のオンカロ建設費が積立金の2.5倍になると仮定すると、現在の通貨価値で計算して、35億ユーロ(約4650億円)になります。 また、封鎖されるといっても、高濃度放射性物質を保管する貯蔵所です。24万年という気の遠くなるほどの年月、安全管理のための科学者や厳重な警備は必要でしょう。「逆転の根拠 その2」にて事故廃炉コストを試算した際に、シェルター運営費を推定で試算しましたが、それと同じ方法でオンカロ運営費も試算してみます。ただし「安全廃炉」の方が、メルトダウンした核廃棄物を扱う「事故廃炉」に比べて、はるかに管理し易いと考えられます。従って、シェルター運営費の10分の1のコストで、オンカロの運営ができると仮定すると、年間運営費は1億円。現在の通貨価値で計算して、24万年間のオンカロ運営費は24兆円になります。 そうすると、フィンランドの核廃棄物保管コストは、オンカロ建設費4650億円、運営費24兆円、合計約24.5兆円になります。ここで忘れてはならないのは、これはフィンランドにある原発4基からでる100年分の核廃棄物を保管するコストだという事実。仮に、同国が原発政策を100年以上続けたり、原発を増設すると、第2や第3のオンカロが必要となり、コストは倍々式に増えます。 フィンランドの原発4基に比べ、日本には54基あります。そうすると、日本の核廃棄物保管コストは、フィンランドの13.5倍に値し、合計330兆円になります。そしてフィンランド同様、100年以上も原発政策を続けたり、原発をさらに増設すると、コストは倍々式に増えます。 ここで、ステップ1と2で、推定でも何とか試算してみた安全廃炉コストを合計してみましょう。解体コストの6.1兆円、核廃棄物保管コストの330兆円、合計336.1兆円。これを含めると、もう比較することに呆れるほど、火力と原子力の発電コストは遥かに大逆転します。これを「逆転の根拠 その3」と呼ぶことにしましょう。 しかし、今の科学において、最も先進的なオンカロをもってしても、本当に想定通り機能するのかについては、多くの疑問や不安が残ります。 例えば、数々の仮説がありますが、過去数百万年の氷河期の中に、4万年から10万年間続く「氷期」と呼ばれるミニ氷河期のような時代が、地球の歴史では繰り返されています。その移り変わりの時期に、巨大地震が頻発したり、地盤の上下変動が数百メートルもあった形跡が残っています。オンカロですら、深さ520メートルでしかありませんので、これらの地震や地盤変動に、高濃度放射性物質を漏らさずに耐えられるのか。 また、今の時代に作られた構造物が、氷期の気温下において4万年から10万年というレベルの年月を、高濃度放射性物質を漏らさずに耐えられるのか。人類が未だかつて体験したことのない試みに、疑問や不安が残るのは当然でしょう。 さらに、日本は100年に一度、大地震の起こる国。24万年の間に、約2千4百回も起こる割合です。そして、地震の震源は数キロから数十キロレベルですので、オンカロより遥か深い地層まで、激しく揺さぶられるのです。構造上、高濃度放射性物質を漏らさずに耐えられるのか、多いに疑問です。 これらの意味においても、核廃棄物を保管する今の技術は、とても完成形とは言えないのではないでしょうか。 続きを読む:持続できない原発(4)【私たちの責任】 前回を読む:持続できない原発(2)【本当のコスト】 全シリーズ:持続できない原発(1)~(4) [1] [2] [3] [4] 同じテーマを読む:環境 Comments are closed.
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