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#10: 戦争は回避できる(第2回)

5/13/2017

 
【問題点B:計画的な選択】
現在、緊張状態が急速に高まっているのは、北朝鮮に関する問題です。
 
北朝鮮は病んでいる国です。国連の報告によると、人口の半数である1300万人の国民が、飢えとの闘いにあえいでいます。飢え死にする国民をそっちのけで、なけなしの資金を軍事費に投入し続けているほど、北朝鮮は病んでいます。現政権を維持することが、国の最優先事項となっていて、そのために国民を恐怖と狂気で支配しています。人々の基本的人権は踏みにじられ続けており、そのトップの行動は、到底許されるものではありません。
 
しかし、そのような切羽詰まった国を、アメリカが追い詰めているのも事実です。
 
北朝鮮のような病んだ国が、核兵器を持つと危険であるのは確かなことです。北朝鮮は、武力を放棄すれば、政権はおろか国家自体が崩壊することを察しているので、アメリカから「核や武器を放棄せよ」と言われても、「絶対にできない」と執着するのでしょう。

また、核兵器を
6800発も保有している国から言われても、説得力は当然ありません。アメリカが世界のリーダーとして北朝鮮を説得するのならば、その名の通り、自らの言動により世界を「リード」しなければならない。それはすなわち、先ずは率先して、自ら保有する核兵器の放棄から始めることではないでしょうか。「それは危険だ」と言うのは、まさに北朝鮮と同じ理論になってしまいます。
 
命綱を取り上げられるかどうかの瀬戸際で、極限の精神状態に陥っている国家権力者を追い詰めるのは、限りなく危険な行為です。若干の外交上の計算ミスにより、戦争を起こしかねないのです。自制心の乏しいトランプ政権に、そのような繊細かつミスの許されない外交を、託すことはとてもできません。
 
さらに、北朝鮮のような切羽詰まった国を、韓国も追い詰めています。
 
韓国はアメリカと共同で、毎年のように軍事演習という名の武力的な威圧を、北朝鮮に対して行っています。しかも、その軍事演習では、北朝鮮を攻撃して、そのトップを暗殺するということを平然と想定しています。そのような威圧に、韓国軍は30万人、米軍は2万人も、参加しているのです。こうした動きへの抗議として、北朝鮮は毎年のようにミサイルを日本海へ向けて発射しています。
 
そして、北朝鮮のような切羽詰まった国を、日本も追い詰めています。
 
集団的自衛権や先制的自衛権を、日本が法律として制定したことにより、アメリカと共に戦争を戦うことを、日本は約束しています。今年はさらに、海上自衛隊が米軍と共に、北朝鮮へ向けた警告として、共同訓練という名の武力的な威圧を行うことを検討しています。
 
今や、どちらもが、どちらもを、威圧して挑発している状況になっているのではないでしょうか。これが、権力者が国を戦争に向かわせる時に見られる、「言い争いが過熱している」段階ではないでしょうか。そして、「この戦争は、相手が挑発したから仕方がなかった」という流れに、お互いが、持って行っているように思われます。
 
この状態を取り上げて、「とっさの正当防衛だったので、戦争は仕方がなかった」とは言えません。北朝鮮の問題は60年余り続いており、考える時間があり、その考えのもとで、「着々と、計画的に、明確な意思をもって、戦争ができる態勢を選択している」からです。
 
安倍首相は、5月8日の自民党役員会で、憲法改正について「立党以来の党是(「とうぜ」とは、党の根本方針という意味)であり、歴代の総裁、すべての党員の悲願」だと改めて語りました。自民党は1955年に立党して以来、5年間を除き、日本の政権を担ってきています。

憲法改正を
60年以上も根本方針としている政党を、国民が選挙で支持し続けていることは、「着々と、計画的に、明確な意思をもって、戦争ができる態勢を選択している」ということではないでしょうか。
 
権力者は、やりたいことをやろうとする時に、国民の支持を得るため、世論を操作することがあります。それを「プロパガンダ」と言いますが、その最たるものが北朝鮮の国営放送や新聞です。北朝鮮はメディアから学校の先生まで、24時間・365日、プロパガンダばかりなのでしょう。共産主義を主張する中国や、大統領に権力が危険なまでに集中するロシアも、国民は多くのプロパガンダにさらされており、言論や報道の自由は厳しく制限されています。
 
そのような状況に国民が置かれると、一体何が本当で、何が作り話なのか、分かりにくくなってしまいます。その混沌とした状況下において、人は徐々に心理的不安を覚え始めます。そして、追い打ちのように、「最近は危険が増している」といった情報を聞かされ続けると、人は自分や自分の愛する人たちの身を守ることを考えるようになり、「自分ファースト」に少しずつ傾き始めてしまいます。それを、権力者は、やりたいことをするためには利用するのです。
 
一方で、民主主義ではどうかというと、前述した国々よりは遥かに恵まれていますが、それでもプロパガンダがない訳ではありません。
 
2003年のイラク侵攻を、国民に支持してもらいたかった当時のブッシュ政権は、「大量破壊兵器をイラクが保有していて、待ったなしの危険な状況なので、世界の安全を確保するため、イラクを攻撃しなければならない」と、情報を流し続けました。その結果、戦争を起こし、多くの無実の人々を犠牲にしたにもかかわらず、大量破壊兵器はありませんでした。

​ブッシュ政権下で流され続けた情報は、プロパガンダであったと言えるでしょう。
9.11同時多発テロにより我を見失っていたとはいえ、多くのアメリカ国民がこれを見抜けず、戦争を避けなかったのは、悔やんでも悔やみきれません。
 
現在のトランプ政権も、「テロリストの攻撃が危険なので、国民の安全を確保するため、イスラム諸国からアメリカへの入国を禁止する」といった情報を流し続けています。しかし、今までアメリカで起こったテロ攻撃のうち、これら対象国出身者の実行犯はほぼいません。むしろ、9.11同時多発テロなど、ほとんどの実行犯がサウジアラビア出身者ですが、肝心のその国は、対象国に含まれていません。これも、プロパガンダと言えるでしょう。
 
現在の安倍政権も、「最近、韓国や中国といった近隣諸国が、より危険になってきた。また、韓国は竹島を、中国は尖閣諸島を、それぞれ横取りしようと企んでおり、けしからん。そこで、国民の安全を確保するため、秘密保護法、安保法案、共謀罪、そして憲法改正が必要だ」と、情報を流し続けています。
 
しかし、本当にそうなのでしょうか。
 
竹島や尖閣諸島という、ほぼ無人島のような場所をめぐる言い争いなどが、平和を守る憲法や法律を戦争が出来るように書き換えて、いずれは国民を危険にさらす程のことなのでしょうか。それとも、「自民党の立党以来60年以上の悲願を達成したい」、「自民党の創始者の一人であり、安倍首相の祖父である元首相・岸信介の願いを叶えたい」、「戦争ができる態勢を、憲法や法律で明確にしたい」、そのためのプロパガンダとして利用しているのでしょうか。
 
現在の政権に有利に働く情報を頻繁に耳にするような場合は、「はたして、これはプロパガンダなのか」と、国民は少なくとも頭の片隅で考える必要があります。国家が他国を「ずるい、卑怯だ、信じられない、けしからん」と言って責め始めたり、「自国民が危険にさらされてきている」と人々の心理的不安を駆り立てて、「安全を確保するため」という様なときは、特に要注意です。
 
第二次世界大戦時の日本国民や、イラク戦争時のアメリカ国民のように、権力者に操作されてしまわないためにも。後になって悔やんでも、時すでに遅しとなってしまわないためにも。

続きを読む:戦争は回避できる(3)【解決策1:責任ある投票】
前回を読む:戦争は回避できる(1)【問題点A:とっさではない】
 
全シリーズ:戦争は回避できる(1)~(4)
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    JOE KIM
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