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#76: モラルって、何なの?(第8回)

8/25/2021

 
【ベジタリアン】
わずか150年ほど前まで、動物たちには感情がなく、恐怖や痛みを感じることがないと、一般的に解釈されていました。
 
肉を食べる人間にとって、その動物たちを殺害することへの罪悪感を避けるには、とても都合のよい考え方だったといえるでしょう。けれども、今となっては当たり前ですが、動物たちにも人間のように感情があることが、科学的に解っています。
 
何も科学に頼るまでもなく、たとえば犬さんや猫さんと暮らしている人たちであれば、動物たちのとても豊かな感情を、毎日体感しているでしょう。農家で生活をしてみると、牛さん・豚さん・鶏さんも、私たちと同じように感情を抱いていることに気づかされます。
 
150年前の人たちが知らなかったことを、今の私たちは日常の中で、そして科学から、その当たり前の事実を確認しています。
 
また、今から200年ほど前まで、世界の至るところで数千年にもわたって、奴隷制度は一般的でした。例えば、約2千年前に建設されたローマのコロッセオでは、500年間にもわたって、主に奴隷や戦争捕虜の人たちを、ほとんどの場合は死亡するまで戦わせ、猛獣と呼ばれる動物たちと殺し合いをさせ、そして、人びとは観客席からその様子を、あたかも野球観戦をするかのように楽しんでいました。
 
今の私たちからすると「どうして、平気な顔をして、そのような酷いことができたのだろう」と疑問に思います。
 
けれども、それと同じように、今からさらに数百年後の人たちから見ると、現在の私たちのことも、「どうして、平気な顔をして、動物や魚たちを大量殺害し、食べることができたのだろう」と問われても、何ら不思議ではないでしょう。
 
また、かつての動物たちのように、魚たちにも、そして植物たちにも感情があることが、いづれ科学的に実証される日が来るとしても、驚くことはないでしょう。事実、現在においても既に、そのような研究結果は多数報告されています。
 
そう考えたなら野菜も植物であり、生きものである以上、数百年後の人たちから、私たちの「野菜を食べる」モラルが問われることは充分に考えられます。
 
もちろん、現在の私たちの知識や技術では、肉や魚は食べなくとも満足な栄養はとれますが、その代わりに野菜を食べなければ、健康は保てません。それは、生きてゆくためには、別の生きるものから栄養を頂かなければならないという、とても割り切りがたく悲痛なまでの生命の限界を、避けられない現実として私たちに突きつけます。
 
けれども、その理由をもってしても、理由があるからといって、モラルに照らして正しいことにはなりません。私たちが植物を殺害して「野菜を食べる」ことも、「自分や愛する人たち、そして全ての人が、日常生活を送るなかで突然に、殺されても妥当だ」と、結論づけることができないことから、モラルに照らして間違っています。
 
その事実を受け止め、一方で別の生きるものから栄養を頂かなければならない生命の限界のなか、どうするのか。
 
食物連鎖を考え、命を奪うことをできる限り減らすには、肉や魚はやめて、野菜を食べることが、現在の私たちにできる有効な選択ではないでしょうか。
 
「肉を食べる・魚を食べる」文化も、奴隷制度も、戦争も、それらの共通点は、「その行動には理由がある」ということ。そして、と殺場の労働者たちが人目に触れにくい所で動物の殺害を引き受けているように、戦争においては、戦場の労働者である兵隊たちが、私たちから遠く離れた所で殺りくを引き受けている。
 
自分自身の手で、目の前で殺さなくていいから、多くの人たちはこれらのことを「理由があるので仕方がない」と、片づけてしまう。
 
けれども、モラルをもって考えてみたならば、人間は「肉を食べる・魚を食べる」文化による殺りくや、戦争による殺りくを、やめる方向で進んでいます。
 
私たち人類の歴史を大きな流れとして捉えたならば、人類のモラルが確実に上昇曲線を描いていることに気がつくでしょう。直線ではなく、紆余曲折なギザギザですが、数百年単位でみれば、そのトレンドは確実に向上している。このとても大きな流れは、私たち一人ひとりが受け継いでおり、そして次の世代へ一人づつ引き継いでゆくのです。
 
現在は、およそ完全には程遠く、モラルの頂点は遥か先ですが、少しづつでも人類をより高いモラルへつないでゆくことが、私たち一人ひとりの責任なのではないでしょうか。


前回を読む:モラルって、何なの?(7)【できる限り減らす】
 
全シリーズ:モラルって、何なの?(1)~(8)
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    JOE KIM
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    34歳でビジネスから引退。現在は、インクルーシブな支援活動家。
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